日本の冬を代表する果物「みかん」。含まれている栄養の健康効果と、正しい食べ方を医師・医学博士の中村美詠子(なかむら・みえこ)先生に詳しく教えていただきました。
みかんの食べ方は、これが正解
皮をむき、袋や白いすじごと食べる!
「果肉を包む袋やすじにはヘスペリジンやペクチンが含まれています。健康効果を十分に生かすため、袋やすじも食べましょう。袋を食べる際はしっかり『かむ』必要があり、オーラルフレイル(※)の予防にもつながります。かめない方は無理をせず、スムージーにするか袋を取って召し上がってみてください」(中村先生)
※嚙む機能や飲み込む力などの口の機能が低下すること。
みかんを四つに割るだけ!
ご存じですか?「有田むき」
みかんを皮ごと四つ割りのひと口サイズにしてから、皮をむいてそのまま食べるだけ。簡単で手が汚れにくい、みかんの産地が生んだ食べ方です。
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おいしく食べて健康になれる
「みかん」はまさに日本の宝
冬に旬を迎える「みかん」は、甘くおいしいだけでなく、栄養面でも優れた果物です。
「2003年から10年にわたり同志社女子大学の杉浦実教授とともに、浜松市北区三ケ日町の住民約千名を対象に、みかんに含まれるカロテノイドに関する研究を行いました。その結果、みかんをたくさん食べ、血液中のβ - クリプトキサンチン濃度が高い方は、動脈硬化や骨粗鬆症の生活習慣病の発症リスクが少ないことが分かりました。水分補給や便秘改善にも役立ち、栄養豊富なみかんを食べて、健康づくりに役立ててみてください」(中村先生)
「みかん」のココがスゴイ!
一般的に「みかん」と呼ばれる、冬が旬の「ウンシュウミカン」。
近年の栄養疫学研究により、その有用性が分かってきました。
骨粗鬆症や動脈硬化予防に
β-クリプトキサンチン
柑橘類特有のオレンジ色の色素成分であり、抗酸化機能を担うカロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチン。この血中濃度が高いと、骨粗鬆症や動脈硬化のリスクが低いことが様々な研究から分かってきています。骨の材料となるカルシウムやビタミンDをしっかり摂り、みかんを食べてβ-クリプトキサンチンを補給して。
β-クリプトキサンチンは、糖度が高く甘いみかんにより多く含まれています。
風邪予防や肌荒れに
ビタミンC
みかんには水溶性のビタミンCが多く含まれ、体の中で起こる酸化ストレスを防ぐ効果(抗酸化作用)があると考えられています。免疫系が適切な働きをするのを助けるほか、皮膚や粘膜の健康維持、鉄の吸収を促す効果も。
便秘改善やコレステロール低下に
ペクチン
水溶性食物繊維である「ペクチン」が豊富なのも、みかんの特徴。ペクチンは整腸作用やコレステロール低下作用が期待できます。「果肉の袋を食べない方もいらっしゃいますが、袋に含まれるペクチンは便秘の改善にも役立つので、袋ごと食べることをおすすめします。ただし、みかんを食べるとおなかがゆるくなる方は、袋やすじを取って食べましょう」(中村先生)
ペクチンは果皮や果肉の袋に含まれています。
抗酸化・抗炎症に
ヘスペリジン
みかんの袋やすじに含まれている、ポリフェノール(フラボノイド)の一種である「ヘスペリジン」。抗酸化作用、抗炎症作用を持つとされ、農林水産省の発表によれば、高血圧や動脈硬化を予防する効果が期待されるそうです。
ヘスペリジンは果肉の袋や白いすじに含まれています。
知ってトクする「みかん」の知恵
選び方や食べる量など、知っておいて損のない「みかん」の知恵を集めました。
選び方と保存のコツ
濃い橙色で、つるっとして滑らか・ヘタは小さめで少し枯れている・皮はふかふかしておらず、張りがある――そんなみかんが「おいしい!」と一般的に言われています。
ザルなどに新聞やキッチンペーパーを敷き、ヘタを下にして並べ、涼しくて風通しの良い場所で保存を。冷凍しても栄養成分は変わらないので、まるごと冷凍しておき、みかんの旬の時期以外に食べるのもおすすめです。
1日3個で健康になる
農林水産省・厚生労働省の「食事バランスガイド」では1日200g(みかん中サイズ2個)の果物の摂取が勧められていますが、さらにβ-クリプトキサンチンの効果を期待する場合は、3~4個食べてもOK。ただし食べ過ぎは禁物。普段の食事に加えて無理なく食べるか、カロリーの高い菓子類の代わりに食べるようにしましょう。
ハウスみかんもスゴイんです!
みかんの季節が終わった後も、健康のためにβ-クリプトキサンチンを継続的に摂取したいもの。中村先生によれば、5月頃まで収穫される中晩生柑橘や5月~夏頃に出回るハウスみかんにもβ-クリプトキサンチンが比較的多く含まれているとのこと。みかんの季節が終わっても、柑橘類を積極的に食べましょう。
【おすすめの柑橘類】
・せとか
・はれひめ
・カラ
・清見
・甘平
取材・文/和栗 撮影/齋藤ジン