ジブリと歌舞伎の融合!新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」尾上菊之助さんインタビュー

漫画を原作にした歌舞伎、現代作家や演出家による歌舞伎など、個性豊かな新作歌舞伎が数々誕生する昨今にあっても、ジブリ関連作品の名作「風の谷のナウシカ」が歌舞伎になるというニュースは、原作ファンも歌舞伎ファンも大いに驚かせました。今回は、そのコラボを実現させた張本人であり、ナウシカを演じる尾上菊之助さんにインタビューしました。

ジブリと歌舞伎の融合!新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」尾上菊之助さんインタビュー 1912p078_01.jpg

新作を創る原動力になっているのは
父や先輩たちへの憧れであり
歌舞伎の歴史そのものです

ジブリと歌舞伎の融合でどんな化学反応が生まれるか

「東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されるのに向けて、新作歌舞伎が創れないかというのがそもそもの出発点でした。 海外のお客様がいらっしゃるのはもちろん、日本の方にとっても日本文化をあらためて感じる機会だと思いまして。『風の谷のナウシカ』を選んだのは、私が大好きだというのは大前提ですが、原作を読んだ時に感じたテーマの普遍性というものも大きいんです。アニメで描かれているのは原作の1巻と2巻の途中までで、全編で7巻まであります。宮崎駿監督がこの原作を描いたのは'80年代。日本がまさにバブル景気に突入していく時代ですが、宮崎監督が描いているのは理想郷とは逆の世界で、戦争やエネルギー問題、核や遺伝子の問題。1年前に宮崎監督が描いていたテーマに時代が追いついて、現代の方がより身近に感じられる世界観です。

歌舞伎の古典もそうなんですが、現代に生き残っている作品にはみなテーマに普遍性があります。「風の谷のナウシカ」が描き出す壮大なテーマには、まさに時代を超えた普遍性があると感じたんです。

宮崎監督に『風の谷のナウシカ』を歌舞伎で上演したいとお願いすることはハードルが高いことだと思っておりました。そこは私も腹をくくり、情熱を持ってお願い申し上げました。1週間ほどして、タイトルさえ変えなければ何をしていただいても構いませんとお返事をいただけた時には、うれしかったですね。それと同時に、世界中にいるジブリファンの期待を裏切るわけにはいかないという責任と緊張を感じました。

ただ、宮崎監督が歌舞伎に期待していただいているというのは間違いないと感じましたので、歌舞伎の良さ、そしてジブリの良さが最大限に生きるように創り上げたいです。『風の谷のナウシカ』のテーマが歌舞伎と融合した時にいったいどんな化学反応が生まれるのか、自分自身がいちばんワクワクと楽しみにしています。演出はできるだけ古典歌舞伎の手法でやります。 映画で使用された久石譲さんの曲も何曲かお借りして、和楽器で演奏します。これはあの場面で使われていた曲だなと気づいていただけると思います。新作を昼の部と夜の部を通して上演するのは江戸時代以来になるのではないかとのことで、そういう戯曲ができたことにも感謝ですね」

ジブリと歌舞伎の融合!新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」尾上菊之助さんインタビュー 1912p079_01.jpg

古典、復活、新作の三本柱が役者の務め

「いま古典と呼ばれるものも創られた当時は新作であって、それが長年にわたって愛されて古典として残っています。歌舞伎役者の務めは、古典を守ること、埋もれた歌舞伎を復活させること、そして新作を創ること、この三本柱だと思っています。私が新作を創り続ける発想やモチベーションの源になっているのは、そういう歌舞伎の歴史そのものだと思います。父(尾上菊五郎)は国立劇場で毎年復活狂言をさせていただいていて、その姿を見ていたことも大きいですし、これまで歌舞伎を創ってきてくださった先輩たちに対する憧れも新作への意欲をかきたてているのだと思います。新作を創ることで間口を広げ、お客様に歌舞伎って面白いなと思っていただける機会を増やせるのではないでしょうか」

お休みのない日々の中で菊之助さんの最近のリフレッシュ法は、料理だそうです。

「いまドラマで料理人を演じているというのもありますが、最近はよく料理をしますね。野菜を刻んだり、煮込んだりすることが気分転換になっています。最初、子供たちはあまり食べてくれなかったのですが、最近はお代わりしてくれるようになりました(笑)。仕事柄どうしても食事は早飯になりがちなので、最近は健康のためによく噛むことを意識しています。お米をよく噛んで、また、お米、お味噌、お漬物、日本古来のものを摂るようにも心がけています」

新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』

12月6日(金)~25日(水)
原作漫画『風の谷のナウシカ』
宮崎 駿 (徳間書店刊)
脚本丹羽圭子、戸部和久 演出:G2
協力スタジオジブリ
製作松竹株式会社
出演尾上菊之助、中村七之助ほか

会場新橋演舞場

住所東京都中央区銀座6-18-2
問い合わせ:チケットホン松竹
電話:0570-000-489または 03-6745-08889
料金:1等席17,000円、2等A席10,000円、2等B席6,500円、3階A席6,500円、3階B席3,000円、桟敷席18,000円(全て税込)
アクセス:東京メトロ日比谷線・都営浅草線「東銀座駅」6出口より徒歩5分、都営大江戸線「築地市場駅」A3出口より徒歩3分

 

尾上菊之助(おのえきくのすけ)

1984年2月歌舞伎座「絵本牛若丸』で初舞台。96年に五代目尾上菊之助を襲名。近年は女方の大役はもとより立役にも意欲的。NHK大河ドラマ「西郷どん」など映像でも活躍。現在「グランメゾン東京」(TBS系)放送中。

この記事は『毎日が発見』2019年12月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「趣味」のキーワード

PAGE TOP