まもなく、心待ちにしていた桜の季節。毎春、花を見上げて温かい気持ちになれるのは、花の咲かない時期にも樹に寄り添い、その命をつなぐ"桜守"がいてくれるからこそです。ご紹介するのは、佐野藤右衛門さんが守ってきた京都の桜。人と同じように、たくましく生き抜かんとする桜の物語です。
前の記事「京都の桜守に聞くいのちの物語「人と同じでそれぞれに個性的。学で解明できない花の営み」(1)」はこちら。
佐野藤右衛門さん
――人と同じように、桜も時を刻んで生きている...。
「生きているから、年を取るのも当たり前。桜はな、生まれて20年でやっと大人の風情の花が咲く。本当の見頃は30年過ぎて色気が出てからですわ。
もっとたてば色気を超えて色香を放ちます。すごみも風格も出る。そして、自分の体の一部を枯らして生きるようになりますわ。樹全部が成長するには体がもたないから、どこかの枝を枯らし、どこかの枝に新しい花を付ける。生き抜く知恵ですな。
女性に年齢を聞いたら失礼や言うけど、わしは聞かない方が失礼と思う。桜も人も、その時々で良さと悪さがみんな出る。お互い良いところを見つければいいだけのこっちゃ」
桜とともに生きてきた佐野さんの手。
――毎朝、起きると必ず自宅の桜畑を歩くそうですね。
「歩いとると、樹が向こうから何かを発信してくるときがありますのや。そうすると、あれ?とわしの気持ちも向いて幹をぽんぽんたたきます。花をしがんで(噛んで)味を確かめたりな」
――昨年の台風で、庭の桜の樹が被害を受けたそうですが。
「折れた樹もあるけれど、それも自然。生きた長さでどうこうということではなく、自然に生きて自然に終わればいい。台風は大きな空気のかたまりが通り過ぎただけと受け止めとります。
わしも3回死にかけました。一度目は、農林学校に通っていた1945(昭和20)年、18歳のとき。急性肺炎に。当時急性肺炎は命取りやからね。
次は80歳で心臓を、昨年のいまごろにも大病をして、どうにか戻りました。それは一服せいちゅうこと。人にも桜にもみんな物語がありますのや」
京都市中京区・二条城「御所御車返し(ごしょみくるまがえし)」
「桜は生きたいように生きとる。かまい過ぎたらあきまへん。上手に距離をとって助けおうたらいいのちゃいますか?」
二条城の二の丸御殿入り口にある唐門の屋根に映える"御所御車返し"。もともとは京都御所にあった"八重一重"の品種で、後水尾天皇(在位1611~29年)がその美しさに御車を引き返させたという逸話が語り継がれている。
二条城
住所:京都府京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
時間:8:45~16:00(閉城17:00)、二の丸御殿観覧 8:45~16:10
休場:12月29~31日
料金:大人600円(2019年4月より、二の丸御殿観覧料は別途400円)
交通:地下鉄東西線二条城前駅からすぐ
問い合わせ先:075-841-0096
取材・文/飯田充代 写真/サダマツヨシハル(佐野藤右衛門さん)