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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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揚力(ようりょく)を得るために進化した独特の飛翔法
昆虫が高速で羽を震わせられるワケ
初夏の野原では、ハチが毎秒250回もの高速で羽ばたき、ブーンという羽音を出して飛び回っています。ハチは、どうしてあんなに速く羽を震わせられるのでしょうか。
小昆虫は、高速で羽ばたかないと飛ぶことができません。小さな羽では大きな揚力[浮揚(ふよう)する力]が得られないからです。そこで、小昆虫は独特の飛翔法を進化させました。
小昆虫には、頭部から腹部に走る飛翔筋(きん)(図のDLM)と、背中側から脚側に走る飛翔筋(図のDVM)の2つの飛翔筋があります。
これら2つの飛翔筋は、互いに反対の動作をします。たとえばDVMが収縮すると胸部の外(がい)骨格が横に伸び、DLMが引き伸ばされます。すると、「伸張(しんちょう)による活性化」という筋肉の特性が働きます。「伸張による活性化」とは、筋肉を強制的に引っ張ると収縮しようとする性質です。引き伸ばされたDLMは、その活性化のためにすぐ収縮します。
すると、今度は外骨格が縦に伸びてDVMが引き伸ばされます。するとDVMに「伸張による活性化」が働き、収縮しようとします。
このように、2つの飛翔筋が交互に収縮と伸張を繰り返し、小昆虫は自律的に高速に羽ばたくことができるのです。これが、ハチが出すブーンという羽音の秘密です。
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