キツツキはなぜ頭痛にならない? 筋肉・頭骨・舌骨......脳を守る3つの鍵/身近な科学

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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。

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頭部にそなわった驚きの構造
「キツツキは頭痛にならない」

人々を笑わせ、考えさせてくれる研究に与えられるイグノーベル賞を2006年に受賞して話題になったのが「なぜキツツキは頭痛にならないのか」という研究でした。実際、キツツキが木の幹に穴をあけるとき、1秒間に20回近くも嘴(くちばし)でつつきます。このとき、1回につき頭が受ける衝撃(しょうげき)は、時速25キロで固い壁にぶつかるのと同じといいます。ところが不思議なことに、それでキツツキが変調をきたすことはありません。

秘密を解くカギは、頭の構造にあります。

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脳が3重に守られているのです。嘴の根本にある発達した筋肉、頑丈(がんじょう)な頭蓋骨(ずがいこつ)の中で一部スポンジ化した頭骨、そして奇妙に頭を巻いてスプリングのように機能する舌(した)の骨[舌骨(ぜっこつ)]が、脳へのダメージを軽減しています。

その頭蓋骨につく嘴は、衝撃に耐えられるよう直線的で、力が分散される構造になっています。また、衝撃で目が回らないよう、普通のまぶた以外に第3のまぶたがあり、しっかりと眼球を固定してくれるのです。

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足を固定して木を垂直につつくのも、脳への衝撃を抑(おさ)えます。これは、テニスのラケットのスイートスポットでボールをとらえると、手首への衝撃が緩和(かんわ)されるのに似ています。

キツツキを見ると、進化の妙を感じます。

 

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涌井貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。著書は、『図解 身近な科学 信じられない本当の話』『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(以上KADOKAWA)、『Excelでわかるディープラーニング超入門』『ディープラーニングがわかる数学入門』(以上、技術評論社)、『「物理・化学」の法則・原理・公式がまとめてわかる事典』(ベレ出版)、『図解・ベイズ統計「超」入門』(SBクリエイティブ)など多数。

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『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』

(涌井貞美/KADOKAWA)

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この記事は書籍『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』からの抜粋です。

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