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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
頭部にそなわった驚きの構造
「キツツキは頭痛にならない」
人々を笑わせ、考えさせてくれる研究に与えられるイグノーベル賞を2006年に受賞して話題になったのが「なぜキツツキは頭痛にならないのか」という研究でした。実際、キツツキが木の幹に穴をあけるとき、1秒間に20回近くも嘴(くちばし)でつつきます。このとき、1回につき頭が受ける衝撃(しょうげき)は、時速25キロで固い壁にぶつかるのと同じといいます。ところが不思議なことに、それでキツツキが変調をきたすことはありません。
秘密を解くカギは、頭の構造にあります。
脳が3重に守られているのです。嘴の根本にある発達した筋肉、頑丈(がんじょう)な頭蓋骨(ずがいこつ)の中で一部スポンジ化した頭骨、そして奇妙に頭を巻いてスプリングのように機能する舌(した)の骨[舌骨(ぜっこつ)]が、脳へのダメージを軽減しています。
その頭蓋骨につく嘴は、衝撃に耐えられるよう直線的で、力が分散される構造になっています。また、衝撃で目が回らないよう、普通のまぶた以外に第3のまぶたがあり、しっかりと眼球を固定してくれるのです。
足を固定して木を垂直につつくのも、脳への衝撃を抑(おさ)えます。これは、テニスのラケットのスイートスポットでボールをとらえると、手首への衝撃が緩和(かんわ)されるのに似ています。
キツツキを見ると、進化の妙を感じます。
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