年齢を重ねたいまだから分かること
――今年9月は歌舞伎が3公演。相当な体力を使われます。
演目によってはジムに行くよりハードだったりします。
それに向けて体力をつけておくために、朝に結構歩いたりしています。
何時に寝ても、ぱちっと6時に目覚めるんですよ。
最近、いいものを発見したんです。
耳の穴を塞がず使えるイヤホン。
車や自転車の音も聞こえて安全ですし、音楽や落語を聴きながら飽きずに歩き続けられます。
――転機となった作品などはありますか?
大きかったなと思うのは2002年に旗揚げした「平成若衆歌舞伎」の舞台。
一般の方を募って上方の歌舞伎俳優を養成する上方歌舞伎塾の塾生の方々との舞台でしたが、初めて座長を経験させていただいたんです。
当時30歳。
歌舞伎は演出家がいないですから、主役があらゆることを考えます。
座頭がどれだけ大変かを知った貴重な経験でした。
その公演で古典のさまざまな大きい役をつとめさせていただいて、それからですね、大きな役をやらせていただくようになったのは。
「四十、五十は、洟垂(はなた)れ小僧」と言いますが、51歳になって、やっと洟垂(はなた)れ小僧になれたのでしょうか。
若い頃は体力も余っていますから、殺陣も最初から最後まで全力でやりますが、年を重ねるにつれ、千穐楽までいかにすべての公演で最高の状態をキープするか、その配分が分かってくる。
お客様も全てが全力だと疲れてしまうと思うんです。
亡くなった父の秀太郎が「よい加減」とよく言っていましたが、そういう緩急が舞台にも人生にも大事だなと思う今日この頃です。
世阿弥の「時分の花と真(まこと)の花」という言葉の通り、若い頃は見た目の美しさで喜んでいただけますが、年を重ねていくと、そういうわけにはいきません。
いかに劇場でお客様に楽しんでいただけるか。
時分の花で培ったものが徐々に開いて真の花になっていく。
そこを目指して精進していきたいと思います。
取材・文/多賀谷浩子 撮影/吉原朱美 メイク/青木満寿子 ヘア/川田 舞