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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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恋人の声だけ聞こえる「カクテルパーティー効果」
遠くの声を聞き取れるのはなぜ?
たくさんの人が談笑する立食パーティーでも、自分の名前が呼ばれるとなぜかハッキリ聞き取れます。また、その会場の離れた場所から聞こえる自分の恋人の声も、他の声にまぎれていてもしっかり理解できます。このような、人の特異な能力をカクテルパーティー効果といいます。
まだ完全には解明されていませんが、人は鼓膜の振動だけで音を聞き分けてはいません。音源の位置を空間的に把握して、発信の同時性を確認し、周波数に分解して、脳は音の意味を理解するのです。その証拠に、パーティー会場の単純な会話録音ではカクテルパーティー効果は得られません。
脳の複雑な処理が音の聞き分けに関与している例をもう1つ見てみましょう。マガーク効果です。人が「が」という音節を繰り返し発音する無声映像を見ながら、同じ人がそれと同期して「ば」と発音する録音音声を聞いてみます。すると、「だ」と言っているように聞こえるのです。視覚的に見えた「が」と、聴覚的に聞こえた「ば」がぶつかり合って、脳が「だ」と錯覚(さっかく)したのです。
以上の効果は聴覚と視覚が互いに結びついていることを示します。脳はさまざまな感覚情報を融合しているのです。
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