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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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人の性(さが)を経済理論に取り込んだ「ナッジ理論」
人は合非理性(ひごうりせい)に満ちた動物
人は「理性的な動物」といわれます。しかし実際は、非合理な行動がいっぱいです。ここに着目したのが、米国の経済学者リチャード・セイラー。人の性を経済理論に取り込んだナッジ理論と呼ばれる理論をつくり、2017年にノーベル賞を受賞しました。
たとえば、薄給のサラリーマンが昼にうなぎ屋へ行ったとします。メニューは松4000円、竹2000円、梅1500円。薄給ならば安い梅を選ぶべきでしょうが、多くは「いちばん安いのはまずいかも」と疑い、竹を選びます。極端回避性と呼ばれる心理です。
また、最初に4000円の松が目に入っていたため、相対的に「竹」が安く感じられる効果もあります。これをアンカリング効果といいます。アンカーとは錨(いかり)を意味します。
商品の宣伝に、「売り切れ続出」、「タレント愛用」などの身近な文句が用いられるのは、親しみやすさに共感する利用可能性ヒューリスティックと呼ばれる人の心理が利用されているからです。
非合理と思えても、それは不合理というわけではありません。合理的な行動にバイアス[偏り]がかかっているのです。このバイアスを体系化しマーケティングへ生かすのが行動経済学と呼ばれる新しい経済学です。
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