2021年の新刊から不朽の名著まで、「毎日が発見」連載陣ら11人が推薦する「年末年始に読みたい良書33選」。今回は現代俳句協会副会長で国際俳句交流協会理事の対馬康子さんが薦める「俳句を始めたくなる本」3選をご紹介します。
【前回】経済アナリストの森永卓郎さんが薦める年末年始に読みたい「これからの暮らしを考える本」3選
【最初から読む】医師、作家の鎌田 實さんが薦める年末年始に読みたい「生き方を見つめなおせる本」3選
対馬康子さんが薦める「俳句を始めたくなる本」
(1)『マンガ日本の古典25 奥の細道』
矢口高雄/著 中公文庫 692円(税込)
松尾芭蕉の「おくのほそ道」入門書に
(2)『角川俳句コレクション 読む力』
井上弘美/著 角川文化振興財団 1,980円(税込)
(3)2021年刊『証言・昭和の俳句 増補新装版』
黒田杏子/聞き手・編者 コールサック社 3,300円(税込)
(1)は「おくのほそ道」の矢口高雄による漫画版。
「あとがき」冒頭に、〈ぼくの「芭蕉」、ぼくの「奥の細道」いかがでしたか〉とある通り、一流の漫画家の史観、文学観によって描かれた芭蕉像にぐいぐい惹き込まれます。
旅の前半のクライマックスである月山までで終わっているのですが、旅の続きを最後まで見届けたくなるでしょう。
「おくのほそ道」入門書としてぜひおすすめの一冊です。
(2)は以前当誌の「俳句のじかん」講師をされていた井上弘美さんによる名句鑑賞読本です。
俳句は作ることが何より楽しいもの。
しかし、すぐれた読み手、鑑賞力があってこそ作品に一層の輝きが出ます。
俳句はなぜ感動するのか、その疑問から逃げずに、季語の力を掘り下げることを中心に、表現の力、十七音の力に視点を分けて解説。
現代の俳句の多様な魅力に誘われます。
(3)は大正生まれの十三名の俳人が自身の口で語った昭和俳句史です。
黒田杏子さんが聞き手となり、それを一人語りの形式で収録したもので、戦争のこと、結社のこと、協会のこと、女性の生き方など、同時代の様々な俳人との交流の中で、どのエピソードも貴重で忌憚なく語られ、読み物として面白い。
昭和という激動の時代にどう生き、そして後進に何を伝えたいのか、そこに「俳句とは」の答えが自ずと立ち上がってきます。
約20年前に角川選書として刊行され高い評価を得たものを、今回新たに20人の執筆者による寄稿を加え、増補新装版として復刊されました。
私も文章を寄稿しています。
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美)