2021年の新刊から不朽の名著まで、「毎日が発見」連載陣ら11人が推薦する「年末年始に読みたい良書33選」。今回は、馬場あき子主宰短歌雑誌「かりん」編集委員の米川千嘉子さんが薦める「短歌を始めたくなる本」3選をご紹介します。
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【最初から読む】医師、作家の鎌田 實さんが薦める年末年始に読みたい「生き方を見つめなおせる本」3選
米川千嘉子さんが薦める「短歌を始めたくなる本」
(1)『未来のサイズ』
俵万智/著 角川文化振興財団 1,540円(税込)
31文字に込められた日常の真実
(2)『短歌日記2019 オナカシロコ』
藤島秀憲/著 ふらんす堂 2,200円(税込)
(3)『ここからはじめる短歌入門』
坂井修一/著 角川選書 1,650円(税込)
まず近年読んだ歌集から2冊をあげました。
(1)は、いうまでもなく『サラダ記念日』(河出書房新社)で知られた作者の6冊目の歌集です。
「クッキーのように焼かれている心みんな「いいね」に型抜きされて」「トランプの絵札のように集まって我ら画面に密を楽しむ」など、時代をシャープに楽しく切り取った歌のほか、成長した息子を思う歌や老いた両親を思う歌なども並んでいます。
日常の心を弾んだ歌にまとめる楽しさが、多くの人の作歌脳を刺激するはずです。
(2)は、1年365日、毎日1首が並んでいる『短歌日記』です。
たとえば、1月1日は「飲みたりぬまま帰りきて飲みたりぬ心のためにつくる雑炊」。
12月のある日は「はるばると遠くへ伸びるわが影の中でも遊べ冬のすずめよ」という具合です。
平凡な毎日のように見えても、人はじつに多くのコトや場面に出会っていることにも気づかされ、こちらも実作に大いに役に立つでしょう。
人生の深い味わいも滲む1冊です。
(3)は、短歌実作の入門書です。
恋の歌、家族の歌、老いの歌など、人生の場面から考える一方、比喩について、文語と口語についてなど、技法や表現から歌を考えます。
わかりやすく書かれながら、秀歌の秘密や歌の味わい方など、短歌の本質にふれる奥深さが魅力です。
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美)