ストレスと心筋梗塞のまずい関係
ストレスが人間のココロにしのび寄り、それが病気を引き起こす大きな原因になっていることは、現代社会ではもはや当たり前といっていいでしょう。災害や近親者の死は強いストレスをもたらしますが、日常的に仕事や人間関係がストレスになっている人も多いと思います。
厚生労働省の調査では、仕事や不安でストレスを感じている労働者は全体の82.2%にのぼり(『労働安全衛生調査』 2022年)、その割合は20年前と比べて20%以上も増加しています。
ストレスが血圧を上げたり、血管を詰まりやすくしたりして、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める要因となっていることは、もはや世界の常識です。
なかでも血圧は数字で表わすことができてデータを残しやすいので、医学上、ストレスとの関係が長く研究されてきました。
イスラエルの医療機関による研究では、1991年の湾岸戦争の際、警報やミサイル着弾にともなって心筋梗塞の発症数が増加したことが報告され、ストレスと心臓の関係が密接であることがわかりました。
このような精神的・肉体的ストレスが、直接・間接的に心筋梗塞を発症させるのは、日本も同じです。
一般的に、心筋梗塞の発症は血圧上昇や血管の緊張、血小板凝集亢進(血液が過度に固まりやすくなっている状態)の日内変動に合わせて午前中に多いのですが、働き盛りの比較的若い世代、特に喫煙者においては、疲れがたまる夜遅い時間帯に発症するなど、社会的な要因も影響しているようです。
加えて、海外でよく見られる「ブルーマンデー(憂鬱な月曜日)の発症」は男性に多く、日本では、女性が土曜日に発症することが多いことも知られています。これは、週末に主婦への家事の依存度が高くなるのが要因でしょう。
また、けんかや震災といったストレスが原因で、心臓が一時的に収縮しなくなる病気があり、日本でも大規模な地震の際に多発していることが確認されています。心臓の収縮障害の様子がたこつぼのような形状になることから「たこつぼ心筋症」と名づけられており、しばしば心不全を起こすケースもあります。