発症72時間以内の手術が最善!「胆石」の治療法とは?

保有者の8割は無症状ながら、発症すると耐えられない激痛が襲うという「胆石」。今回はこの「突然の激痛リスク」を減らすために、胆石の基礎知識や、発見、治療方法などを、日本赤十字社医療センター消化器内科副部長 の伊藤由紀子先生に伺いました。

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発症から72時間以内!最善治療は「手術」

治療の基本は、胆のうの摘出手術です。近年、腹部に複数の孔を開け、医療機器を挿入する腹腔鏡下手術が盛んに行われています。開腹手術に比べてお腹の傷が少なくて済むため、5日程度での退院が可能です。

「胆のうは胆汁をためる臓器なので、摘出しても食生活に問題は生じにくいといえます。脂っこいものを食べたときに胆のうが収縮して胆汁を出しますが、その役割を胆汁が通る胆管が担うようになるからです。胆石は石だけ排出させたり薬で溶かしたとしてもまた再発する可能性が高いこともあり、胆石症の治療の第一選択肢は胆のう摘出手術になっています」と伊藤先生。

手術のタイミングは、発症から72時間以内です。ただし、炎症が広がっているなど重症の場合には開腹手術が必要になることもあります。また、狭心症などで血液をサラサラにする抗血栓薬を服用中の人は、出血しやすいのですぐに手術の適用とはなりません。胆のうの出口を結石が塞いでいる場合には、細い管を胆のうに刺してチューブでつなぐ「経皮的胆のうドレナージ」といった内科的な治療が行われ、手術のタイミングを見極めることになります。中には「手術はイヤ」と思う方もいますが、胆石症では手術以外の治療はあまり期待できません。

発症72時間以内の手術が最善!「胆石」の治療法とは? 1905_p089_04.jpg痛みの症状が出てから72時間以内に、体に負担の少ない腹腔鏡下手術で胆のうを摘出するのが基本。炎症がひどいときには開腹手術も。

 
「結石を溶かす薬を用いる胆石溶解療法は、胆のうの収縮機能が低下していると効果がなく、治療成績も18%程度とよくないのです。また、以前は体の外から高周波の衝撃波を当てる体外衝撃波胆石粉砕術も行われていましたが、粉砕して小さくなった胆石が、胆のうの口や胆管に詰まるようなこともあり、おすすめできる治療法ではありません」

受信が必要な症状の目安は、右の脇腹(右季肋部)の激痛と38度以上の高熱です。ただし、高齢になると発熱を伴わないことがあるので注意しましょう。右脇腹の痛みがあるときには、かかりつけ医などに相談して検査を受けることがなによりです。

胆石は、重症化しなければ決して怖い病気ではありません。規則正しい食生活を心がけ、症状が出たときに治療を受ければ治る病気です。また、無症状で胆石を持っていても、胆のうがんになるわけではありません。胆のうがんの人は高い確率で胆石を保有していますが、胆石保有が胆のうがんの発症リスクを高めるわけではないとされています。もちろん、胆石によって症状が出てしまうと、七転八倒するような激烈な痛みをもたらすことがあります。健康診断で胆石と診断されて、症状が出たらすぐに病院に行きましょう。

「健康診断のエコー検査で、胆のうがんが見つかることもあります。がんは早期発見、早期治療が大切です。腹部のエコー検査は、簡便で体への負担も少ないので定期的に健康診断を受けるように心がけてください」と伊藤先生。

胆石を避けるのは難しいですが、身体状態を把握して症状が出たら適切に対処しましょう。

 

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

 

<教えてくれた人>

伊藤由紀子(いとう・ゆきこ)先生

日本赤十字社医療センター消化器内科副部長 。帝京大学医学部卒。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。2016年より現職。肝胆膵領域の診断・治療を長年行い、胆石、膵がんなどの内視鏡的治療も得意としている。

この記事は『毎日が発見』2019年5月号に掲載の情報です。

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