牛乳を飲んだら、弱った胃の粘膜を守ってくれる?/胃の不調

pixta_27214781_S.jpg「食欲がない」「胃がもたれる」「胃がキリキリと痛む」......誰もが一度ならず経験があるのではないでしょうか。胃の調子は健康のバロメーター。不調であれば、「食べた物が悪かった?」「それともストレスが大き過ぎた?」と考え、食べる量を控えるなどして、胃の健康を保とうとします。なぜ、胃の調子は悪くなってしまうのでしょう。しょっちゅう起こる胃痛や胸やけから、胃食道逆流症、胃潰瘍や胃がんまで、兵庫医科大学病院副病院長の三輪洋人先生にお聞きしました。

前の記事「若い・やせてる・女性は要注意。「非びらん性胃食道逆流症」とは?/胃の不調(10)」はこちら。

 

分泌された胃酸の中和は難しい

現代人は、胃酸を多く出していて、それには、食生活の変化が影響しています。それでは、食べる物によって胃を守ることもできるのでしょうか。例えば、牛乳を飲むことで、強烈な酸から胃の粘膜を守ることはできるのでしょうか。

「1970年頃まではそのように考えられていました。胃痛があり、胃酸が胃粘膜を傷めていると診断された場合、酸を中和する制酸剤という薬が使われていました。ところがほとんど効果がなくて、進行して胃に穴が開いてしまい、結局は手術するということが多くあったのです。

24時間pHメーターで胃の中の酸性度を24時間調べられるようになると、胃酸を中和するのは難しいことがわかりました。通常、胃の中の酸性度はpH1~2です。そこに制酸剤や牛乳が入ると、pH6~7くらいに変化しますが、5分程度で数値は下がってきます。数分しか効果がないのです」と三輪先生。

牛乳は酸と混ざればどろどろに固まってしまいます。食べ物を消化するためにどんどん分泌される胃酸を中和し続けるためには、大量の牛乳を飲み続けなければならず、胃酸を牛乳で中和し続けるのは現実的には無理でしょう。

 
胃酸の分泌を抑える薬の効果が向上

同様に、食べ物が酸性であることと、それが胃に入ったらどうなるかは別の問題で、理論的には大きな影響を与えることは考えづらいようです。例えば、オレンジジュースはpH3.5~4程度と食品としては酸性度が強いですが、飲んだからといって、通常pH1~2の胃の粘膜を傷めるとはいえません。

「1980年代には、胃酸が分泌されるメカニズムがわかりました。それからは、分泌されてしまった胃酸を抑制するのではなく、胃酸の分泌を抑制するという考え方が主流です。現在では、1980年代に出た薬の何十倍もの効果があるすばらしい薬が出ていて、症状の緩和に役立っています」(三輪先生)

『胃酸分泌抑制薬』は、プロトンポンプ阻害薬とH2ブロッカーがあります。

 

次の記事「内視鏡検査なら、病気の早期発見でメリット高い/胃の不調(12)」はこちら。

取材・文/三村路子


1807p112_prof.jpg

三輪洋人(みわ・ひろと)先生

兵庫医科大学理事・副学長。兵庫医科大学病院副病院長。内科学消化管科主任教授。1982年、鹿児島大学医学部卒業。医学博士。専門は、消化器内科一般のほか、特に逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、ピロリ感染症の診断と治療、また内視鏡による胃がんの早期診断と化学療法。著書に『「胃もたれ・胸やけ」は治せる 機能性ディスペプシア・胃食道逆流症・慢性胃炎』(NHK出版)ほか。

(参考資料)
『「胃もたれ・胸やけ」は治せる 機能性ディスペプシア・胃食道逆流症・慢性胃炎』(NHK出版)
日本消化器病学会ガイドライン 
・厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(2016年)

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP