「ヘルペス」とは、ヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症の一種。感染してしまったことのある人も多いのではないでしょうか? 今回は代表的な性感染症の一つである性器ヘルペスの治療方法について、横浜市立大学附属市民総合医療センター皮膚科准教授の蒲原毅先生にお聞きしました。
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性器ヘルペスは、クラミジアや淋病に並ぶ代表的な性感染症の一つです。患者数で比較すると、女性ではクラミジアに次いで2位、男性ではクラミジア、淋病に次いで3位を占めています。
性活動のさかんな20代~30代に多く見られる病気ですが、50代以上にも一定の患者数がおり、再発しやすいことが分かります。
唾液や粘膜同士の接触で感染するため、性器ヘルペス患者との性行為だけでなく、口唇ヘルペスの患者とのオーラルセックスで感染することもある病気です。患部に赤みを帯びたただれや潰瘍などが多発し、痛みやかゆみによる強い不快感をともないます。男性は亀頭、陰茎に症状が出やすく、女性は外陰部のほか、子宮頚部に症状が及ぶケースもあります。ただし、性器ヘルペスによって不妊になることはありません。
「患部が赤くただれたり潰瘍ができたりするため、一見して感染の分かりやすい病気ですが、症状の出ていない患者との接触でも感染することがあり、それがヘルペスの感染を拡大させる原因の一つとなっています。特に、初感染後3カ月まではウイルスを体液中に排出している可能性が高いため、注意が必要です」(蒲原先生)
性器ヘルペスは初感染時に重症化しやすく、皮膚や粘膜に現れる症状に加えて、リンパの腫れや発熱、倦怠感などの全身症状が出ることもあります。悪化すると歩行や排尿が困難になることも珍しくないため、早い段階で皮膚科、泌尿器科、婦人科などを受診しましょう。
治療には、アシクロビル(薬名:ゾビラックス)やバラシクロビル(薬名:バルトレックス)などの薬が使用されます。塗り薬(軟膏)か内服薬の処方がほとんどですが、免疫不全をともなう重症例では点滴を行うこともあります。
再発は初感染時に比べて症状が軽く、発熱や倦怠感などの症状はあまり見られません。
また、再発する直前に、むずむずするような違和感や、ぴりぴりとした痛がゆさなどの前触れが局所に現れることが多く、この時点で抗ウイルス薬の内服薬を使用すると、症状をかなり抑えることができます。違和感を覚えたときは、できるだけ速やかに医師の処方を受け、適切な治療を始めてください。
「近年では新しい治療として『再発抑制療法』が行われるようになりました。年に6回以上再発を繰り返す患者に限定されますが、症状が出ていない期間も少量の抗ウイルス薬を使い続けることで、再発症状の発生を防ぎます。再発による身体的な苦痛や精神的な苦痛を軽減することで、患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上が期待できます」(蒲原先生)
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取材・文/高橋星羽(デコ)