アーチの崩れが招く?足の構造から知る「外反母趾」の仕組み

「外反母趾」の痛みに悩んでいる人も多いのではないでしょうか?若年層の発症も多く、現代病のひとつにも数えられている外反母趾の原因や症状、診断の基準について、山王病院・整形外科部長の青木孝文先生にお聞きしました。


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「外反母趾」は、足の母趾(親指)が第二指(人さし指)側に「く」の字に曲がり、母趾の付け根の関節(MTP関節)の突き出た部分に靴が当たり、しばしば痛みを生じる病気です。女性の患者数が圧倒的に多く、患者の90%に上ります。

病状が進行すると、靴を履かなくても痛みが出るなど、日常生活に支障を来します。

外反母趾の原因は先天性あるいは遺伝性のほか、加齢に伴う筋肉の衰えが考えられますが、完全には解明されていません。

足の裏は縦方向と横方向にアーチがあるドーム状の構造になっていて、全身の体重を支え、衝撃を吸収するバネの役割を果たしています。アーチを形づくる骨が靭帯で結び合わされ、さらに筋肉でしっかり支えられています。

■足の構造

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足は片足28個の骨からできています。それらの骨が靭帯で連結され、さらに筋肉で支えられることで、縦(上のイラスト)と横のアーチ(右下のイラスト、前から)が形成されています


加齢などにより、筋力や靭帯の柔軟性が低下すると、足全体が横に広がる「開張足」(かいちょうそく)になり、この構造が崩れ、外反母趾を招くと考えられます。

■外反母趾が起こるしくみ

アーチの崩れが招く?足の構造から知る「外反母趾」の仕組み 1905_p091_02.jpg親指を内側にひねる筋肉(母趾内転筋)がきつく引っ張られ、親指を外側に広げる筋肉(母趾外転筋)とのバランスが崩れて、母趾内転筋が強く作用します。また、左下のイラストのように、足を引き締める構造が衰えて、横のアーチが崩れる「開帳足」になります

 
MTP関節には「滑液包(バニオン)」という潤滑液を含んだ袋がありますが、関節が曲がってくると、滑液包が刺激を受けて炎症を起こし、痛みを感じます。また、関節周囲の筋肉の硬さによる痛み、皮下神経の痛みもあります。

診断はレントゲンで、母趾の付け根の「基節骨(せつこつ)」とそれを支える「中骨(ちゅうそくこつ)」の軸の角度を計測します。20度以上あれば、外反母趾と診断されます。変形の度合いと痛みは必ずしも一致しません。

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取材・文/古谷玲子(デコ) イラスト/メイタ ハセガワ

 

<教えてくれた人>

青木孝文(あおき・たかふみ)先生

山王病院・整形外科部長、国際医療福祉大学 臨床医学研究センター教授。

日本医科大学卒業。1991年、日本医科大学大学院修了。医学博士。日本医科大学武蔵小杉病院整形外科部長などを経て、2014年より現職。著書に『外反母趾は包帯1本で治せる』(マキノ出版)など。

この記事は『毎日が発見』2019年5月号に掲載の情報です。

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