手術に備えて「マイ血」を確保。安全性の高い「自己血輸血」/やさしい家庭の医学

pixta_12691457_S.jpg病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。

書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。

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自分の血液をあらかじめ取っておく
「自己血輸血」

●副作用などなく、高い安全性が

輸血は、大けがや病気などによって大量に出血した場合や、大きな手術が行なわれる際に多量の血液が不足するときになされるものです。輸血には、採血された血液をそのままの形で輸血する「全血輸血」と、血液を各成分に分けて輸血する「成分輸血」がありますが、近年では成分輸血によるものが一般的になっています。

日本においては、赤十字血液センターの尽力により、血液が安定的に供給されるようになったため、出血が多い手術であっても比較的安全に行なわれることが多くなってきましたが、同種血輸血(他人からの血を輸血として使用すること)では、さまざまな副作用や合併症、GVHD(移宿病-いしょくへんたいしゅくしゅびょう)のほか、感染症やエイズなどの輸血感染症の事例が報告され、100%安全とはいえないのが本当のところです。

GVHDは他人の血液を輸血したときに血液中の白血球が患者さんを攻撃する疾患(しっかん)で、敗血症を起こした場合の死亡率は非常に高くなります。

そこで考えられたのが、自分の血をあらかじめ採っておき、それを手術時に用いる「自己血輸血」です。

自己血輸血では、他人からもらった血をいっさい使用しないため、副作用や合併症を防ぐことができ、高い安全性が確保されています。

自己血輸血には、貯血式、希釈(しゃく)法、回収法の三つがあります。貯血式は手術の何日か前から自分の血を採って貯蔵し、手術時に使用するもので、1週間に1回、およそ400mlずつ採血します。緊急時以外の手術はたいてい前もってスケジュールが立てられますので、この貯血式が有効なわけです。

希釈法は、手術を開始したあと、1度に1000ml前後の自己血を採血し、その後採血量に見合った輸液を行ない、患者さんの体内の血液を薄める方法です。

手術が終了したあと、採血された血は患者さんの体内に戻されます。

回収法は、手術中や手術後に出た血液を回収し、患者さんの体内に戻す方法で、手術中の出血を吸引し、遠心分離機にかけることによって不要な成分を取り除き、赤血球のみを戻す術中回収法と、手術後に、出血した血液をフィルターを通して体内に戻す術後回収法に分けられます。

ただし、自己血輸血はいかなる場合でも採用されるものではなく、予想以上の出血が見られる場合においては他人の血液が使用されることもあります。手術を受ける際は、事前に医師から説明を受けるとよいでしょう。

 

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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)

1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。


 

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この記事は書籍 『やさしい家庭の医学 早わかり事典』からの抜粋です

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