病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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輸血のときに重要なABO型と Rh 型
「血液型」
●1901年に発見された血液型
「血液型」は赤血球の表面にある「抗原(こうげん)」によって決定されます。血清学的方法によって血液型は多くの型に分けることができますが、輸血のときに重要なのが、ABO型とRh型です。
献血提供者の血液を患者さんに輸血する場合、お互いのABO型が同じものを選びます。
もしも、患者さんに異なったABO型の血液が輸血されると、輸血された赤血球が固まったり壊されたりしてショックを起こしたり(溶血反応)、輸血された血液に含まれるリンパ球が増殖することにより、患者さんの体細胞を破壊する「移植片対宿主(いしょくへんたいしゅくしゅ)病」に罹(かか)ったりします。そのほか、急性腎不全などの重篤(じゅうとく)な症状も引き起こすことになるのです。
ABO型では、A型、B型、O型、AB型の四つに分かれ、日本人の割合としては、順に、40%、20%、30%、10%とされています。
一方、Rh型は陽性(Rhプラス)と陰性(Rhマイナス)に分かれます。そのほとんどが陽性ですが、陰性の人の場合は、同じABO型でもRh型の血液が使われることになります。
たとえば、両親の血液型がA型とB型の場合、生まれてくる子どもの血液型はA型、B型、O型、AB型のいずれかになり、A型とO型の場合、A型かO型のどちらかになります。後者のケースで、もしもA型の子どもが生まれた場合でも、O型の形質が遺伝しなかったというわけではなく、A型の陰に隠れているだけといえます。
なお、血液型を世界ではじめて発見したのはオーストリアの血清化学者であるラントシュタイナーで、1901年のこと。彼はその後も抗原抗体反応のすべてにわたって研究を続け、1930年にはノーベル生理学・医学賞を受賞しています。彼が血液型を発見したきっかけは、ある人の血清にほかの人の赤血球を混ぜると凝固する場合とない場合を見つけたことによるもので、これにより、人の血液には複数の型があることが分かったというわけです。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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