足の指の間がかゆい、水ぶくれができる、皮がむける...これらはすべて水虫の症状です。日本人の5人に1人が水虫に感染しているといわれています。水虫の原因は「白癬菌(はくせんきん)」というカビ(真菌・しんきん)です。白癬菌による感染症を「白癬」といい、実はこのカビ、足だけでなく手や頭など体のいろいろなところに棲みつくことができるのです。
そんな白癬菌の性質や特徴、治療法や予防法を、白癬治療の第一人者、仲皮フ科クリニック院長の仲 弥先生に伺いました。
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足、手、頭、爪、股...体のいろいろなところに感染します
「水虫」とは一般的に白癬菌に感染した足のことを指します。しかし白癬菌が感染するのは足だけではありません。湿度が高く、白癬菌の栄養源となる硬いたんぱく質「ケラチン」が存在するという条件が揃えば、体のどの部分にでも棲みつくことができるのです。そして白癬は、菌が棲みつく場所によって呼び名が変わります。
●足白癬(あしはくせん)
一般的に私たちが「水虫」といっているものです。足の指の間に発症する「趾間型(しかんがた)」、水ぶくれができる「小水疱型(しょうすいほうがた)」、足の裏全体が固くなる「角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)」の3つに分類されます。
症状により抗真菌の外用薬、内服薬で治療します。
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●手白癬(てはくせん)
手のひら、手の指、指の間に生じるもので、「手の水虫」ともいわれます。その多くは足白癬がうつったもので、症状も足白癬とほぼ同じです。手は洗う機会が多いため感染する確率は極めて低いのですが、湿疹や手荒れと間違われることが多く、慢性化してしまってから来院する人が多いです。慢性化すると皮膚が厚く硬くなり、ひび割れたりし、この状態になると内服薬でないと治療できません。
●爪白癬(つめはくせん)
白癬菌が爪に感染したもので、「爪水虫」ともいいます。多くの場合は足白癬から菌がうつったものです。爪が白や黄色に変色したり、悪化すると爪がもろくなってボロボロはがれたりします。年齢が上がるにつれて患者数が増える傾向にあります。
主に内服薬で治療します。
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●頭部白癬(とうぶはくせん)
「しらくも」ともいいます。毛穴や頭皮に感染し、頭皮に赤い湿疹のような症状が出たり、髪が抜けたりしますが、かゆみは伴いません。髪の毛が弱くなって切れやすくなり、頭皮に黒い点状に見えることがあります。湿疹と間違えてステロイド外用薬を塗ると免疫が落ち、膿がたまったり赤くはれたりする「ケルスス禿瘡(とくそう)」になることがあります。
犬や猫に寄生しているミクロスポルム・キャニス(犬小胞子菌)という白癬菌が原因になることが多く、ペットを抱いたりすることで感染するため、女性や子どもに多く見られます。
主に内服薬で治療します。現在はペットショップで予防治療されているため感染は稀ですが、野良猫や野良犬との接触は注意が必要です。またペットが原因の場合は、動物病院でペットも白癬の治療をする必要があります。
●体部白癬(たいぶはくせん)
「たむし」ともいいます。虫刺されのような小さな赤いブツブツができ、次第に赤い輪になって広がるのが特徴です。体部白癬は足白癬からうつることが多いと考えられ、顔、手の甲、腕など体のさまざまな部位に感染します。主に外用薬で治療します。
●股部白癬(こぶはくせん)
股に感染した白癬で、「いんきんたむし」ともいいます。陰嚢(いんのう)周辺に汗がたまりやすい男性に多く見られます。陰嚢に感染することは通常なく、股に感染します。主に外用薬で治療します。
どの白癬にも、治療には抗真菌の外用薬または内服薬を用いますが、白癬は自分で病気を判断することは難しく、間違った治療は症状を悪化させるもとになります。不安がある場合は皮膚科専門医の診察のもと治療を行いましょう。
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取材・文/ほなみかおり
慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部皮膚科医長、同・皮膚科専任講師を経て、1996年に仲皮フ科クリニック(埼玉県川越市)を開業。真菌のエキスパートとしてメディアに多数出演。埼玉県皮膚科医会会長、日本臨床皮膚科医会参与(前副会長)、日本皮膚科学会代議員、埼玉県皮膚科治療学会理事、日本医真菌学会評議員、日本皮膚科学会認定専門医。