病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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腸の異変が引き起こす軟便
「下痢」
●胃がんの初期症状でも見られる
「下痢」とは、便が液状ないし半液状になっている症状のことをいいます。
下痢の原因はさまざまですが、腸の中に大量の液体が含まれた状態になると起こりやすくなるといえます。
なぜそのようになるかといえば、冷たい水や、油を大量に体内に取り入れたことにより、腸がそれらを消化・吸収できないことがまず挙げられます。また、細菌や薬剤などの影響によって腸の粘膜が炎症を起こしたり、ホルモンや薬剤が腸の中に水分を分泌させたことによって腸の蠕動(ぜんどう)運動が過剰になるケースも、下痢を引き起こす要因となります。
下痢は、急性と慢性の2種類に分かれます。
急性下痢は、細菌やウイルスなどによるもののほか、食中毒や精神的なストレスからくる場合があります。この場合は安静にしているのがいちばんで、水分補給を忘れずに繰り返します。薬剤には、止瀉剤(ししゃざい)≪下痢止め≫や腸運動抑制剤が使われます。
慢性下痢は大腸粘膜の過敏や腸内細菌の増殖などによって起こります。
精神的なストレスも、慢性下痢を引き起こしている大きな要因といえます。この場合、腸自体に病変が認められるわけではなく、過敏性腸症候群といって、腸の働きが異常になって起こる病気といえます。
下痢になったときに気を付けなければならないのは、脱水症状にならないようにすることです。
もしも食中毒になった場合、症状としては下痢だけでなく嘔吐(おうと)も加わりますので、体内の水分が急激に失われることになります。一般的に、体重減少が1~2%の場合は軽度、3~9%は中度、10%以上なら重度の脱水(だっすい)症と見ることができます。
中度の脱水症であっても、めまいや頭痛、倦怠(けんたい)感などを引き起こすことがありますので注意が必要です。このような症状になったら、迷わず病院へ行きましょう。
なお、ウイルス性肝炎や胃がん、膵臓(すいぞう)炎など、単なる水分の過剰摂取以外の病気のときも下痢の症状が見られることがあります。下痢を一つのきっかけとして、ほかの病変が見つかることもあるのです。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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