病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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動脈硬化で心筋が酸素不足に陥った状態
「狭心症」
●心臓やみぞおち、左肩が痛んだら
心臓の栄養血管である冠(かん)動脈の血流が不足したり、滞(とどこお)ることによって心筋が酸素不足になって起こるのが「狭心症」です。
狭心症はたいてい、心臓を取り巻いて血液を送っている冠動脈が狭くなったことによって起こります。主な原因は動脈硬化によるものです。冠動脈が狭(せば)まっている状態では、その先が虚血(きょけつ)状態になるため、心臓の動きが鈍くなります。これにより、心臓がきゅーっと締め付けられる感じになり、みぞおちや左肩などにも痛みが生じてきます。
狭心症には2種類あります。
早朝や夜間などに起こる安静時狭心症と、急な運動や排便でいきんだりするときに起こる労作性狭心症です。狭心症で多く見られるのは後者でしょう。
労作性狭心症は、発症しても数十秒から10分程度で治まりますが、発作が再び起こることのないよう、生活習慣を整えることが大切です。
高血圧や糖尿病のほか、高脂血症や喫煙、運動不足、肥満による影響も指摘されています。
先述のように、狭心症が引き起こされる主な原因は、冠動脈の動脈硬化によるものです。いったん動脈硬化になってしまうと、もとの健康な状態に戻すことは、極めて難しいとされています。ですから、狭心症の治療法には、薬物療法、カテーテル・インターベンション、バイパス手術が挙げられます。
薬は硝酸(しょうさん)薬≪ニトログリセリン≫やカルシウム拮抗(きっこう)薬、交感神経ベータ遮断(しゃだん)薬などが使われます。これらの薬を服用することによって、血管の緊張を緩め、心臓の負担をできるだけ少なくしておこうという狙いです。
硝酸薬は冠動脈を拡張させる作用がある薬で、舌の裏に含んで唾液で溶かし、すばやく成分を吸収させるものです。カルシウム拮抗薬も、冠動脈を広げる役割を持つ薬です。交感神経ベータ遮断薬は、心臓の働きを抑えることで心筋の酸素需要を減らす作用があります。
◎冠状動脈の内側の壁にアテローム(粥状のこぶ)ができ、それが破裂すると血栓となり、血液の流れが途絶えがちになる。そこでカテーテル(細い管)の先にバルーンを付けて挿入することにより、血液の通り道が広がることになる。この手術は「PTCA(経皮的冠状動脈形成術)」と呼ばれる。
カテーテル・インターベンションとは、カテーテルという細い管を冠動脈の入口まで通し、狭窄(きょうさく)部分までバルーンを送り込んで膨らませ、狭窄部分を拡張させる手術です。
バイパス手術は足の静脈や心臓の近くにある動脈の一部を使ってバイパスを通すものです。薬物療法やカテーテル・インターベンションが行なえない場合に採られるものです。この治療ですと、冠動脈の狭い部分に手が付けられることはありません。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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