年齢を重ねるほど、「髪」に関するお悩みも増えますよね。薄毛や白髪などは「遺伝だから仕方ない...」と諦めていませんか? 実は「髪」の未来は、日頃の生活習慣によって劇的に変わります。そこで今回は髪の研究者・伊藤廉さんによる著書『印象は髪がすべて 大人髪のトリセツ』をご紹介。人の印象を大きく左右する「髪」についての知識を深め、さっそく日々のケアを始めましょう。
※本記事は伊藤 廉著の書籍『印象は髪がすべて 大人髪のトリセツ』から一部抜粋・編集しました。
【前回】「白髪や薄毛は遺伝だから仕方ない」はウソ! 老化の原因は「日頃のケア」にあり?
実は「後天的要素」が肝心!
脂っこい食生活は、薄毛のもと
先ほど「薄毛には後天的な要素が多く関係している」とお伝えしました。
後天的な要素とは、睡眠や食生活など、生活習慣に関係することですが、近年これらについて世界各国でさまざまな研究がされています。
皆さんも気になりませんか?
まずは2018年インドの研究グループが発表した壮年性脱毛症(AGA)は、メタボリックシンドロームと関係しているという研究をご紹介しましょう。
この研究では、20~50歳の男女200名を対象に、AGAを発症している人100名、していない人100名を比較しました。
AGAを発症していない人たちの間では、メタボリックシンドロームの人が17%であったのに対し、AGAを発症している人たちの間では、メタボリックシンドロームの人が53%にのぼりました。
つまり、薄毛の人の半数以上が、男女関係なく肥満体型だったことになります。
さらに、2020年の中国の研究では「肉食やジャンクフード」と薄毛の関係を調べています。
肉を食べる機会が多い人は、そうでない人に比べると、AGAの発症リスクが1・23倍、ジャンクフードを食べる人は、そうでない人に比べると、AGAの発症リスクが1・63倍という結果でした。
これらの研究から考えると「肥満体型」や「肉やジャンクフード」の摂り過ぎは、薄毛に繋がる可能性が高いと言えそうです。
私たちの研究でも、脂っこい食事をたくさん摂取すると、頭皮の皮脂量が増え、それにともなって頭皮常在菌のコリネバクテリウムも増えることがわかっています。
この常在菌は薄毛のリスクにも関係しています。
「飲酒」に「睡眠不足」「ポニーテール」も薄毛要因だった!?
食事とともに、薄毛との関係が指摘されるのは、「アルコール」の摂取量です。
2020年、中国の研究チームは20~40代の女性1825名を対象に、インターネットによる大規模調査を行いました。
その結果、アルコールを摂取する人たちは、そうでない人たちに比べて、女性型壮年性脱毛症(FAGA)の発症リスクが2・15倍高いことがわかりました。
この調査は女性が対象ですが、飲酒については、男性にも同様のリスクがあると考えられます。
また同じ調査では「ヘアスタイル」に関するアンケートも実施しました。
日常的にポニーテールをしている女性は、そうでない女性に比べFAGAの発症リスクが2・03倍も高くなります。
先ほどお伝えした「ポニーテールと薄毛の関係」とは、この研究のことです。
また我々日本人に関係していそうなのが、「睡眠」と薄毛の関係です。
2020年タイの研究チームは、AGAを発症している人223名、そうでない人223名を対象に、睡眠に関する比較調査を行いました。
その結果、重度のAGA患者は、総睡眠時間が6時間以下の人が多いことがわかりました。
実はOECD(経済協力開発機構)の調査において日本人は加盟国中で、もっとも睡眠時間が短いことがわかっています。
睡眠時間を削って仕事や家事をしている方も少なくないでしょうから、他人事ではありませんね。
ここまでお伝えした研究で、薄毛には生活習慣が関係していることがおわかりいただけたと思います。