年齢を重ねるほど、「髪」に関するお悩みも増えますよね。薄毛や白髪などは「遺伝だから仕方ない...」と諦めていませんか? 実は「髪」の未来は、日頃の生活習慣によって劇的に変わります。そこで今回は髪の研究者・伊藤廉さんによる著書『印象は髪がすべて 大人髪のトリセツ』をご紹介。人の印象を大きく左右する「髪」についての知識を深め、さっそく日々のケアを始めましょう。
※本記事は伊藤 廉著の書籍『印象は髪がすべて 大人髪のトリセツ』から一部抜粋・編集しました。
【前回】薄毛の原因は「脂っこい食事」!? 睡眠不足や飲酒も「髪の老化」に関係していた
一夜にして白髪はウソ
白髪の発生メカニズム
白髪にまつわる歴史上の逸話として、マリー・アントワネットがフランス革命で幽閉されたとき、一夜にして見事なブロンドが白髪になったという話があります。
研究者の立場からすると、このようなことは起こりません。
白髪が発生するメカニズムを説明しておきましょう。
私たちの髪は、毛根にある毛母細胞で生まれます。
毛母細胞の近くには「色素細胞」がいて、メラニンをつくってはせっせと毛母細胞に受け渡しています。
メラニンを渡された髪が伸びると、濃いメラニンをもつ私たちアジア人は黒髪に、薄いメラニンをもつ欧米人は、ブロンドやブラウンヘアになります。
初期の白髪の原因に、色素細胞でメラニンはつくられているものの、毛母細胞にうまく受け渡せていないケースがあるのです。
ときどき黒髪と白髪が混ざった不完全な白髪がありますが、あの状態ですね。
さらに加齢が進むと、色素細胞がメラニンをつくれなくなり、やがて色素細胞そのものが失われると、完全な白髪へと移行します。
このように白髪は段階的に発生します。
一方で、すでに伸びている髪内部にはメラニンが存在しますから、「一夜にして白髪」ということは、ありえません。
白髪とストレスとの抜き差しならない関係
前述のマリー・アントワネットのエピソードもそうですが、白髪は何か強いストレスを受けたときに、発生しやすいと考えられています。
薄毛の場合も同じですね。
私自身の経験でも、ストレスは白髪や薄毛に関係しているように感じます。
実は今の会社に入社して、非常に忙しかった時期、「伊藤さん、最近急に白髪が増えたね」「ちょっと、生え際のところが薄くなってきたんじゃない?」と、同僚から立て続けに指摘されたことがありました。
一般的な会社ではあまりない会話かもしれませんが、私たちの専門はヘアケアですから、髪に関しては目ざといというか、忌憚なく意見を言い合います。
少し話が逸れてしまいましたが、いったいなぜストレスが白髪や薄毛に関係するかと言うと、ストレスは免疫を暴走させて、自身の細胞を攻撃することがあるためです。
毛根の細胞は、免疫系の細胞と密接に関わっています。
ストレスで免疫細胞が暴走すると、真っ先に攻撃されるのが、毛根にある毛髪の幹細胞なのです。
代表的な例が自己免疫疾患の一つとされる「円形脱毛症」ですね。
なぜ毛根の細胞が攻撃されるかについては、よくわかっていません。
しかし、ストレスと円形脱毛症の関係については、これまでもさまざまな臨床の現場で指摘されています。
白髪の場合も同じく、毛根にある色素細胞が攻撃されると、一時的にメラニンがつくられなくなります。
また、私たちの研究においては、ストレスによって頭皮に「炎症」が発生すると、抜け毛や白髪に繋がることもわかっています。
原因となるストレスが落ちついたら、頭皮や髪の状態も少しずつ元に戻るはずですが、一時的とはいえその影響は侮れません。
ストレスは睡眠の質や、食生活、そして飲酒量にも影響を及ぼすことがありますから、頭皮や髪にとって本当によくないことだと考えています。
ずっとお伝えしてきたのは、薄毛や白髪には遺伝的な要素より、後天的な要素のほうが強く影響するということでした。
それは、後天的な影響が大きいとしたら、「自分でなんとかできる」余地も大きいということでもあります。
皆さんもそう思いませんか?
現代を生きる私たちは、大なり小なりストレスと無縁ではいられません。
食事も不規則になりがちですし、ときには寝不足に陥ることもあるでしょう。
それでも、自分なりに「なんとかうまくやっていく」方法を見つけていくことが、大切ではないかと思うのです。