年齢を重ねるほど、「髪」に関するお悩みも増えますよね。薄毛や白髪などは「遺伝だから仕方ない...」と諦めていませんか? 実は「髪」の未来は、日頃の生活習慣によって劇的に変わります。そこで今回は髪の研究者・伊藤廉さんによる著書『印象は髪がすべて 大人髪のトリセツ』をご紹介。人の印象を大きく左右する「髪」についての知識を深め、さっそく日々のケアを始めましょう。
※本記事は伊藤 廉著の書籍『印象は髪がすべて 大人髪のトリセツ』から一部抜粋・編集しました。
【前回】あなたの「髪」は何歳に見える? 髪の印象は「美容行動」の高さで決まる!
老化のサインは薄毛、白髪だけじゃない?
4000名調査からみえてきた事実
「髪の老化」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
真っ先に浮かぶのは、「白髪」や「薄毛」ではないでしょうか。
確かにこれらは年齢とともに生じる「目にみえる変化」であり、40代以上の方に増える悩みです。
その一方で、仕事で会う美容師さんから「髪を触っていると、20代後半くらいから、なんとなく質感が変化してくるんだよね」という話を頻繁に耳にしていました。
実際にこの年代の女性にアンケートをとると、ご自身でも「なんとなく今までと違う髪」を意識する方が増加します。
たとえば「最近、髪がまとまりにくい」「以前より寝グセがつきやすくなった」などです。
一つ一つは些細なことかもしれませんが、私たちはこの違和感を見逃さず、「髪の老化は、もっと早い段階から始まっているのではないか?」と考えました。
この研究に着手した今から約10 年前は、髪や頭皮の変化を「老化」の視点でみつめた研究はほとんどありませんでした。
そこで私たちはまず、「年代ごとの髪の実態」を客観的に知るために、2013年から大規模調査をスタートさせました。
20代から60代までの女性、各年代およそ800名ずつの髪を実際に触らせていただいて、感触や髪の形状、艶のありなしなどを、専門の評価者がスコア付けしました。
さらに頭皮や髪の水分量、皮脂量、頭皮常在菌のバランスなど、あらゆる角度から計測。
その結果たどりついたのが、髪の老化は、早い人では20代後半で始まっているという結論です。
4000名規模の調査からみえてきた事実とはどんなことでしょうか。
最初の「違和感」を見逃すべからず!
まず大規模調査で実施したアンケートにおいても、30代になると「髪に何がしかの違和感」を覚える女性が増えることがわかりました。
「以前より広がりやすくなった」「夕方になるとヘアスタイルが崩れる」などですね。
この「最初の違和感」こそが、老化の予兆です。
違和感の正体をもう少し具体的に知るために、年代別に本人が感じる髪悩みを集計してみたところ、20代後半から30代にかけて「パサつき・広がり」「うねり・まとまりのなさ」を感じる人が、飛躍的に増えることがわかったのです。
いったいこの年代の髪に何が起こっているのでしょうか?
あなたは大丈夫?
髪の"老化度"と"生活習慣"チェック
□1 スタイリングが決まりにくくなった
□2 以前より寝グセがつきやすい
□3 コテで巻いても夕方には取れてしまう
□4 アウトバストリートメントの使用量が増えた
□5 美容院でいつものカラーやパーマ剤が沁みることがある
□6 シャンプーしてもかゆみがある
□7 以前よりフケが気になるようになった
□8 シャンプー時に手に毛が絡む
□9 夏でも手足が冷えやすい
□10 頭皮が硬くこわばっているように感じる
□11 バスタブにつからず、シャワーで済ませている
□12 あごのエリアにニキビが目立つ
□13 仕事が忙しく、睡眠不足に陥りがち
□14 過去に極端なダイエットをしていた、もしくは現在ダイエット中
□15 脂っこい食事が好き
いかがでしたか? 1 ~ 10 でチェックが多いほど、髪が老化している可能性があります。11 ~ 15でチェックが多い方は、生活習慣に起因している可能性があります。
違和感の正体は、S字型にうねる「老化特有の髪」だった
30代で「パサつき・広がり」「うねり・まとまりのなさ」が本当に増えているのか、私たちは20代の髪と、30代の髪を観察してみました。
同年代でも髪の状態はさまざまですから、わかりやすいサンプルとして「20代前半の健康的な髪の人と、ダメージ毛の人」「30代後半の健康的な髪の人と、ダメージ毛の人」の4つのパターンを、それぞれ比較しました。
まず、20代前半で健康的な髪の方は、シルエットが面で整って、全体的にまとまりやすく、指を通すと潤いを感じる状態です。
一方20代前半でダメージがある髪の方はというと、面で整ってはいるものの、毛先3cmにハネや絡まりが集中していることがわかりました。
それでは、30代後半の髪はどうでしょうか。
この世代になると、健康的な髪の方においても、まっすぐな髪の中に「S字型にうねる髪」が混在し始めるのです。
ここまで顕著に「うねり」は出てくる!
上の写真のような髪ですね。
30代になると多くの方に発生するこのうねった髪は、生まれつきのクセや、カラーリングなどで発生するダメージとは明らかに違うものです。
年齢とともに生じる「独特の形状」と言えるでしょう。
生まれつきのクセは、毛束全体が「面でうねる」のが特徴ですが、老化している毛の特徴は、「一本一本が独立してS字型にうねる」ことです。
髪全体に「まっすぐな髪」と「うねった髪」が混在しますから、当然面で整いにくく、指を通すとざらつきを感じます。
このS字型のうねりこそが、髪の「違和感」の正体であり私たちはこのうねり毛を「エイジング毛」と名づけました。
ちなみに30代後半のダメージ毛がある髪の方はというと、S字型にうねったエイジング毛が、パーマなどのダメージによって、「中間からカクカクと不規則に縮れた毛」に変わります。
指を通すと髪の中間からごわついて、絡まりやすく、ときにはプチンと切れてしまうこともあります。
20代のダメージが「毛先3cm」に集中するのに対し、30代のダメージは「中間から毛先全体」に広がるのも、この大規模調査からわかったことでした。
あなたの髪に、エイジング毛はあるでしょうか?
よかったら髪を触って確かめてみてください。
もし触り心地がゴワゴワしている場合、パーマやカラーリングによるケミカルなダメージのみの状態なのか、それともエイジング毛とケミカルなダメージが両方あるのか、比較的簡単に見分ける方法があります。
毛束を取り、毛先を折り曲げたあと手を離してみてください。
すぐに元に戻る場合は、髪本来の弾力が存在していて、ケミカルなダメージのみの状態です。
もし直角に折れ曲がったままなら、髪の弾力が著しく低下して、老化とケミカルダメージが共存している可能性があります。
このS字型のエイジング毛は、そのまま放っておくと、いずれどこかの段階で、より深刻な髪の老化状態に移行していきます。
最初の違和感に気づいたときに、お手入れを見直すのが理想と言えるでしょう。
エイジング毛の対策法を知るためにも、私たちは髪になぜこのようなS字型のうねりが生じるのか、ミクロの視点でも観察してみました。