オーラルフレイルは老化のサイン。口腔機能の低下により、口腔内が不潔になったり乾燥したり、かむ力が低下するなどすると、咀嚼・摂食・嚥下障害が起こり、ひいては誤嚥性肺炎や要介護のリスクを招きます。今回は、東京都健康長寿医療センター病院 歯科口腔外科部長、自立促進と精神保健研究チーム研究部長の平野浩彦(ひらの・ひろひこ)先生に、のどや声帯の筋肉を鍛える「長生きうがい」のやり方を教えてもらいました。
【前回】認知症のリスクにも! あなたの「オーラルフレイル」度をセルフチェック
「長生きうがい」その1:のどや声帯の筋肉を鍛える
のどトレうがい
のどの奥を水で刺激して、主に食べ物の誤嚥を防ぐ筋肉を鍛えられる「うがい」です。
噴水の上に乗せたボールを転がすようなイメージで行いましょう。
はじめに 必要なのは水とコップのみ
姿勢は?
背筋を伸ばして立ち、正面を向いて行いましょう。
いつやるといい?
朝昼晩の食後、歯磨きの後、外出から帰宅したときなど1日3回以上行いましょう。
最適な水の量は?
目安は30ml(大さじ2杯)です。水が多過ぎると口の中で水を移動させにくくなり、少な過ぎると口の中の筋肉への刺激が少なくなります。水を口に含んでみたときの感覚で、多少増減して調整してもOKです。
(1)水を口に含む
背筋を伸ばして立ち、水30mlを口に含み、唇を閉じる。
(2)水をかむ
せんべいをかじるイメージで、水を5回「カチカチ」とかむ。
(3)のどに水をためる
口を閉じたまま、ほんの少し上を向き、のどに水をためる。
上を向き過ぎは厳禁!
上を向き過ぎて行うと、首を痛めるほか、水がのどの奥に勢いよく入って誤嚥やムセを招くので注意しましょう。
(4)水で音を立てる
口を少し開け、のどを震わせながら「ガラガラ」と10秒間音を立ててうがいをする。最初は5秒でもOK。少しずつ延ばして10秒できるように。
(5)水を吐き出す
(1)〜(5)を1セットとして朝・昼・晩に2セットずつ
「長生きうがい」その2:のみ込むための筋肉を強化
お口筋(くちきん)トレうがい
のみ込む動作を担う顔と口の中の筋肉、舌の奥の筋肉を鍛えるのに有効です。
水流が病原菌や食べかすを洗い流し、口の中を清潔にする効果もあります。
(1)水を口に含む
上記のどトレうがいと同じように背筋を伸ばして立ち、水30mlを口に含み、唇を閉じる。
(2)水をかむ
せんべいをかじるイメージで、水を5回「カチカチ」とかむ。
(3)水を左右に移動させる
水を右頰にぶつけるイメージで素早く移動させ、右頰を大きく膨らませる。
↑
1秒間に1往復10秒間
↓
水を素早く左頰に移動させ、左頰を大きく膨らませる。1秒間に左右1回ずつ、10秒間行う。
10秒間できない人は5秒間でもOK 。少しずつ延ばして10秒間できるようにしましょう。
(4)水を前後に移動させる
水を口の中の前側に移動させて、両頰を大きく膨らませる。
↑
1秒間に1往復10秒間
↓
水を口の中の後ろ側に移動させ、頰と口を強くすぼめる。1秒間に前後1回ずつ、10秒間行う。
(5)水を吐き出す
(1)〜(5)を1セットとして朝・昼・晩に2セットずつ
誤嚥性肺炎や風邪・インフルエンザを防ぐ「長生きうがい」
水でうがいをすると風邪発症率が4割減に
出典:Satomura K, et al. Am J Prev Med. 2005 Nov;29(4):302-7.
口の中やのどが乾燥すると、風邪やインフルエンザのウイルスが繁殖しやすくなり、感染症のリスクが高まります。「長生きうがい」は口の中にしっかりとした乱流が起こるため、ウイルスなどが洗い流されると考えられ、感染症の予防が期待できます。
「長生きうがい」はのどに近い舌の奥まで刺激するのが特徴。舌の動きが良いと食べ物をのどへ送る嚥下機能が高まり、のどの神経が整うとのみ込んだ情報が正しく脳に伝わり、誤嚥を防ぎます。また、唾液が分泌されやすくなって口の中が潤うので、食べ物がのみ込みやすくなります。
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/太田裕子