コレステロールはアルツハイマー型認知症の予防にも有効/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(27)

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「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか? 
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。

前の記事「肉+抗酸化物質の摂取が脳の老化防止につながる/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(26)」はこちら。

コレステロール値を気にしすぎない

もうひとつ、肉食がよい効果をもたらす理由は、前章でも少し述べたように、人にとって大切な男性ホルモン、女性ホルモンの原料が肉に含まれるコレステロールであることです。

男性ホルモンのテストステロン、女性ホルモンのエストロゲンはコレステロールから作られます。エストロゲンは骨粗鬆症の予防になり、またアルツハイマー型認知症の予防にも役立ちそうだということがわかっています。

男性より女性のほうが長生きなのも、閉経後に病気をしやすくなるのもエストロゲンの影響と考えられています。ですから、老化予防のために閉経後にエストロゲンの補充治療を受ける女性が欧米では半数近くいるのです。

それになにしろ、コレステロールは細胞膜の原料でもあるので、これが不足すると細胞の再生がうまくいかなくなり、老化が促進されたり、免疫機能が衰えたりします。

このように述べると、「それでもコレステロール値が高いと早死にするのでは」とか、「ではどれくらいのコレステロール摂取が適当なのか」という疑問が出ることは私も承知しています。

何事も過ぎたるは及ばざるがごとしで、実はコレステロール値もものすごく高くなければ心筋梗塞などのリスクを高めないのだという調査研究もあります。
東京都小金井市で行われた70歳老人の生存率の追跡調査では、コレステロール値がやや高め(男性190~219㎎/dl、女性229~249㎎/dl)とされる人が最も生存曲線が良好で、低かった人(男性169㎎/dl、女性194㎎/dl以下)が最も生存曲線が悪いという結果が出ました。低い人よりやや高い人のほうが長生きしているのです。

これらの研究結果から、日本動脈硬化学会も1997年から高コレステロール血症の基準値を変更し、「220㎎/dl以上」から「240㎎/dl以上」に引き上げています。

また、日本病院会予防医学委員会では、男性では「240㎎/dl以上」と同じですが、女性は「240㎎/dl以上」と、より寛容な数値を提示して、これ以下の場合は治療をしなくてよいとしています。

定期健診などでは血液検査の結果の欄に必ずコレステロール値が示されるはずですから、このような新しい基準を、判断の材料にするといいでしょう。

 

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和田秀樹(わだ・ひでき) 

1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。

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『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』

(和田秀樹/KADOKAWA)

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この記事は書籍 『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』からの抜粋です

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