頻尿や尿もれは、基本的には命に関わる病気ではありませんが、普段の生活が送りにくくなるので、非常につらいものです。家族であっても話しにくく、気持ちがふさいでしまう人もいるでしょう。そこで長年、泌尿器のトラブルを治療してきた医師・高橋悟先生の著書『全国から患者が集まる泌尿器科医の 頻尿・尿もれ・夜間頻尿の治し方』(毎日が発見)より、自分でできる「頻尿」「尿失禁」「過活動膀胱」の改善方法をご紹介します。
※画像はイメージです。
おしっこトラブルは老化現象なの? 病気なの?
出かけるのが大好きな60代主婦の加瀬さん。
以前に比べてトイレが近くなったと感じて、高橋先生の診察を受けにやってきました。
(この会話は高橋先生の診察をもとにしたフィクションです)
加瀬さん「最近やたらとトイレに行きたくなることが多い気がして、いわゆる『頻尿』じゃないかと思っているのですが」
高橋先生「いつ頃からですか?」
加瀬さん「5年ほど前からですね。だから老化現象のひとつだろうと、その頃はあまり気にしなかったんですが......」
高橋先生「確かに、年を重ねると多くの人が経験するものでもありますが、尿トラブルは単なる老化現象ではないんです」
加瀬さん「そうなんですか! では、病気ってことになるんでしょうか?」
高橋先生「頻尿や、ちょっとしたはずみに尿がもれてしまう尿もれは、病気のひとつなんですよ。膀胱炎が頻尿の原因である場合も考えられますしね」
加瀬さん「言いにくいんですが、実は、何度かちょっとだけもれてしまったことがあるんですよね......」
高橋先生「40歳以上の女性だと、半数近い4割くらいの人が尿トラブルを経験しています。意外と多いでしょう? がまんしていても治るわけではありませんから、恥ずかしがらずに受診してよかったと思いますよ」
加瀬さん「そうですね。それだけ多くの人が経験していると聞くと、少し気が楽になります」
「頻尿」と「尿もれ」は、違う病気だが関連がある
加瀬さん「私は昼間にだいたい1日8回くらいトイレに行くんですが、これだと『頻尿』になりますか?」
高橋先生「頻尿とは、『朝起きてから寝るまでの排尿回数が8回以上、夜間1回以上』と定義されています。ただ、元々回数は人それぞれ違いますし、10回行く人でも本人が困っていないなら心配いりません。加瀬さんは悩んでいるわけですから、頻尿と考えていいでしょう」
加瀬さん「『尿もれ』はトイレが間に合わなくてもれてしまう病気ですよね?」
高橋先生「がまんできない尿意でもらしてしまう切迫性尿失禁、立ち上がったときにふともれてしまう腹圧性尿失禁などは女性に多く、排尿後のちょいもれは中年以降の男性に多いなど、尿もれにもさまざまなタイプがあります」
加瀬さん「なるほど。頻尿と尿もれはどちらも病気だけど、違う病気なんですね」
高橋先生「違う病気ですが、お互い密接な関わりがあります。ですから、症状を改善させる対策はほぼ同じになります」
頻尿と夜間頻尿は別物。それぞれ違う原因がある
高橋先生「加瀬さんは、夜寝てから起きるまでの間にトイレで起きることはありますか?」
加瀬さん「1回は起きてしまいます。特に冬は起きたくないのに嫌になりますね。夫も最近は、何度かトイレに起きているようです」
高橋先生「頻尿といっても、昼間頻尿と夜間頻尿があります。就寝後、排尿のために1回以上起きなければならず、それによって日常生活に支障をきたしている状態が夜間頻尿です」
加瀬さん「昼も夜もトイレのことばっかり。原因は同じなんでしょうか?」
高橋先生「夜間頻尿の原因によっては、昼も頻尿になることがあり、夜間だけの人もいます。加瀬さんは夜間頻尿もあるということですし、ご主人も少し心配ですね。でも、単に水分のとりすぎが原因ということもありますよ」
加瀬さん「夫は睡眠不足の様子で、昼間、よくウトウトしています。運転はなるべくしてほしくないんですよね」
高橋先生「そもそも眠りが浅いのか、尿意で起きてしまうのかを知る必要があります。それによって対処法も変わってきます」