おしっこトラブルは老化現象なの? 病気なの?/頻尿・尿もれ・夜間頻尿の治し方

原因は違っても、男女ともに年齢を重ねると尿もれの可能性が

高橋先生「では、尿もれはどんなときだったか、わかりますか?」

加瀬さん「それが、テレビを見ていて大笑いしたときなんです」

高橋先生「それは腹圧性尿失禁ですね。せきやくしゃみをしたとき、重いものを持ち上げたときなどおなかに力が加わったときに起こります。尿量は多くなく、いわゆるちょいもれでしょう?」

加瀬さん「はい。出産後にもそういうことはたまにありましたが、最近になってまた......」

高橋先生「腹圧性尿失禁の原因は、妊娠・出産によって骨盤底筋という筋肉がゆるむこと、加齢によって尿道を締める尿道括約筋そのものが弱くなることの2つが考えられます。もらさないように心配するあまり頻尿になることもあり、早めにトイレに行くくせがついてしまうと、膀胱が小さくなって尿をためにくくなるんですよ」

加瀬さん「女性に多いんですね。薬などでよくなりますか?」

高橋先生「効果がある改善方法は、骨盤底筋トレーニングです。2~3カ月続けると、効果が期待できますよ。このトレーニングは、男性のちょいもれ、排尿後尿滴下にも有効です」

加瀬さん「男性も尿もれするんですね。やはりシニア層ですか?」

高橋先生「40歳代からあらわれはじめるのが、排尿した後にジワジワ少量の尿がもれ出る排尿後尿滴下です。尿道を締める役割をする球海綿体筋という筋肉の機能低下、尿を出す勢いが落ちるため尿が残りやすくなる、などが原因です」

加瀬さん「女性とは原因が違うんですね」

高橋先生「男女とも起こるのが、過活動膀胱によって強い尿意が突然起き、がまんできずにもらしてしまう切迫性尿失禁です。頻尿もともないますし、もれる量が多いのが特徴です。また、溢流性尿失禁とは、自分の意思と関係なく尿がもれ出てしまう病気です」

加瀬さん「尿もれといってもいろいろあるんですね」

高橋先生「女性の尿失禁患者さんが10人いると、5人は腹圧性尿失禁、2人は切迫性、3人は混合性という割合になるといわれます。まずは自分のタイプを見極めること。それによって治療法は変わりますし、きちんと対処すればまた旅行にも行けるようになりますよ」

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知識を身につけ、「骨盤底筋トレーニング」「膀胱トレーニング」「足上げ寝」などのセルフケアを実践し、尿トラブルを防ぎましょう。

 

高橋 悟(たかはし・さとる)
1961年生まれ。日本大学医学部泌尿器科学系主任教授、日本大学医学部附属板橋病院病院長。群馬大学医学部卒業。虎の門病院、東京大学医学部泌尿器科助教授などを経て現職。2003年には、天皇陛下(現上皇さま)が入院された際の担当医師団も務める。悪性腫瘍から排尿障害、尿失禁まで、泌尿器に関わるあらゆる疾患を研究、診察している。

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※この記事は『全国から患者が集まる泌尿器科医の 頻尿・尿もれ・夜間頻尿の治し方』(高橋悟/毎日が発見) からの抜粋です。
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