夜中にトイレに行きたくなって起きてしまうこと、ありませんか? 実はその原因の一つが"足のむくみ"だったのです。むくみを解消してぐっすり眠りましょう。今回は日本大学医学部 泌尿器科学系 主任教授の髙橋 悟(たかはし・さとる)先生に「加齢と夜間頻尿の関係性」について教えてもらいました。
夜間頻尿は加齢とともに増加する
年を重ねてから就寝後のトイレ頻度が増えたという人も多いようです。
加齢と関係があるのでしょうか。
「夜間頻尿のおもな原因は3つです。①夜間の尿量が増える"夜間多尿"、②膀胱に少しの尿しかためられない"膀胱蓄尿障害"、③眠りが浅く軽い尿意でも目が覚めてしまう"睡眠障害"。全て加齢が原因とは言い切れませんが50歳をすぎてから悩まれる方が多いのは事実です」(髙橋先生)
放置するとどうなるのでしょう。
「慢性的な睡眠不足になり、日常生活に支障をきたすことも。また、高齢者が夜中に何度もトイレに行けば、転倒や骨折の危険も高くなります。さらに〝夜間頻尿の高齢者は死亡リスクが高まる〟という研究結果もあります。夜間頻尿が直接の死因ではありませんが、排尿回数が増える原因に心不全や糖尿病、高血圧などが隠れている可能性もあるのです。たかが頻尿と甘く見てはいけません」(髙橋先生)
《睡眠中の排尿をコントロールするしくみ》
抗利尿ホルモンの働きで、ふつうは寝ている間の尿量は減ります。
【脳】尿量を減らす働きをする抗利尿ホルモンは、脳の視床下部でつくられ下垂体から分泌されます。抗利尿ホルモンが腎臓に働きかけ、夜間の尿量を減少させます。
【腎臓】抗利尿ホルモンが腎臓に働きかけ、夜間の尿量を減少させます。
つまり通常は夜間は排尿しなくてもいい
⇒快眠!
《夜間頻尿が起きる3つの理由》
1.多尿・夜間多尿
水分の摂り過ぎや足のむくみ、加齢にともない抗利尿ホルモンの分泌が減少することなどがおもな原因。
[多尿とは...]
1日の尿量が「体重×40ml=□ml」を超えたら「多尿」
(例)体重50kgの人なら2000ml以上
[夜間多尿とは...]
1日の尿量のうち夜間の尿量が33%以上あること。
【改善法・治療法】
適切な水分量を摂ること。足のむくみを防ぐこと。
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2.膀胱が小さくなる
加齢とともに膀胱のしなやかさが失われ、十分に尿をためられなくなる状態です。少量で尿意を感じるので、頻繁にトイレに駆け込むことに。過活動膀胱や膀胱炎の可能性も。
【改善法・治療法】
まずは医師の診察を受けましょう。加齢が原因であれば股間の筋肉を鍛えるトレーニングも効果が期待できます。病気の場合は、治療が先決です。
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3.睡眠障害
軽い尿意でも目が覚めるぐらい眠りが浅い状態です。一度トイレに行くと朝まで眠れないことも。原因は加齢や心因性の他、睡眠時無呼吸症候群も考えられます。
【改善法・治療法】
毎日同じ時刻に起き、朝日を浴びましょう。体内時計がリセットされ、夜になると自然に眠気がおとずれます。軽い運動も効果的です。日常生活に影響がある場合は、かかりつけ医に相談を。
他に考えられる理由
加齢による心臓や腎臓の衰え、肥満も一因です。また腎臓病や糖尿病、高血圧、心不全、脳血管障害など重大な病気が隠れていることもあるので要注意。持病の薬に利尿作用がある場合も。薬の種類や飲むタイミングを医師と相談しましょう。
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取材・文/湊 香奈子 イラスト/木波本陽子