認知症予防策として「ながら作業」が有効。楽しいことをプラスして相乗効果を

65歳以上の認知症患者は、なんと、およそ5人に1人! 人生100年と言われる現在、身体の寿命と同じように、脳の健康を延ばすことが人間の長生きの幸せなのではないでしょうか。そこで今回は、順天堂大学名誉教授で、アルツハイマー治療で日本トップの新井平伊先生による『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文藝春秋)より、「脳の健康」を保つ方法を連載形式でご紹介します。

【前回:名医が勧める認知症予防の有酸素運動。意外と「貧乏ゆすり」も有効!?】

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会話しながら散歩など、脳の別々の場所を働かせる

認知症の予防策として、デュアルタスク(二重課題)の効果が注目されています。

いわゆる「ながら作業」のことで、脳の働きを維持するために有効です。

たとえば室内で体操をしながら、頭の中で計算をする。

または、ジョギングしながら歌を歌う。

古い歌ならばその当時の思い出がめぐるなどして、脳の記憶への刺激になります。

散歩しながら、景色を題材に俳句を作るのもいいでしょう。

数人で会話をしながら楽しく散歩することもデュアルタスクになります。

ただし、会話に夢中になって、暴走してくる自転車への注意を怠ってはいけません。

また、コロナ渦の中ではマスクをつけての会話、そしてソーシャルディスタンスにも配慮しましょう。

体操しながらテレビを眺めるだけでも、広い意味でデュアルタスクにつながるかもしれません。

運動機能と一緒に頭を使うと、脳の別々の場所を同時に働かせることができるのです。

国立長寿医療研究センターが開発した「コグニサイズ(cognicise)」は、英語のcognition(認知)とexercise(運動)を組み合わせた造語です。

個人や複数人で、軽い運動をしながら計算やしりとりをするプログラム。

運動と認知トレーニングの組み合わせによって、MCI(軽度認知障害)の段階から認知機能が低下するのを抑制できることが示唆されています。

どんな内容の運動をどのくらいやるのが適しているかを調べて自分に課すよりも、好きなことや楽しめることを自分が可能な運動にプラスして、自分なりのやり方を見つけることです。

散歩しながら引き算をするよりは歌うほうが楽しいだろうと思いますが、楽しめるのであれば、計算でも英会話でもかまいません。

嫌々やっても、まったく意味がないのです。

脳の健康にとって大事なのは「意・情・知」です。

楽しくやれれば意欲が湧くし、相乗効果も上がります。

意を持ってプランニングし、情で楽しみ、結果として知の老化を防ぐ。

これが理想です。

【次回:難聴も認知症の要因に。聴力低下の改善は脳の活動にとって大切!】

【まとめ読み】『認知症にならない18の方法』記事リスト

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「脳の状態を把握することは、全身の健康を把握することと同じです」と新井先生。いますぐできる頭のメンテナンス、18の方法を解説します

 

新井平伊(あらい・へいい)

1984年順天堂大学大学院医学研究科修了。アルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。著書(監修)に『アルツハイマー病のことがわかる本』。

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『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』

(新井平伊/文藝春秋)

現在、日本人の「健康寿命」は大いに延びていますが、「脳の寿命」は身体ほど延びていません。そんな「脳の寿命」を伸ばし、活性化させる方法を老年精神医学の世界的権威である新井平伊先生が教えます。「少し汗をかく程度の有酸素運動を週に3回、30分くらい行う」など、具体的なアドバイスが盛りだくさんの一冊です。

※この記事は『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(新井平伊/文藝春秋) からの抜粋です。

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