患者&予備軍が700万人に上るといわれ、痛みとともに手指が曲がってしまう難病の「関節リウマチ」。これまで「不治の病」と思われてきたこの病気の治療法は、実は新薬の登場で劇的に変化しているのだそうです。そこで、10万人の患者を救ってきたリウマチの専門医・湯川宗之助さんの著書『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』(KADOKAWA) より、「リウマチを治すための最新情報」をご紹介します。
外出時・運動時に関節が喜ぶ生活習慣&工夫
外出したときに、「手洗い」「うがい」「マスク」「アルコール消毒」でウイルスへの感染対策を取ることは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まる前から、当院の関節リウマチの患者さんにお勧めしていたことです。
特に秋~冬の時期は、インフルエンザウイルス対策として、これらをいっそうこまめに行うようにアドバイスしていました。
なんらかの感染症になってしまうと、関節リウマチが悪化するのは間違いありません。
その感染を抑えようと正常免疫が働くのですが、それが関節リウマチの異常免疫までも活性化させてしまうからです。
また、治療薬を使っているならば、その使用を一度ストップしなければならないかもしれません。
ですから、かからなくていい感染症はきちんと防ぐようにするべきなのです。
しかし、コロナ禍を経験したことで、「手洗い」「うがい」「マスク」「アルコール消毒」はもう、一般にかなり浸透していると思います。
今後もぜひ、その習慣を続けていってください。
関節に負担をかけすぎない運動を
関節リウマチのかたにお勧めできる運動は、ずばり「散歩」です。
ただし、痛みや腫れが現れているときは、無理に行うことはありません。
また、痛み・腫れがないときでも、ジョギングなどで走る必要はありません。
関節への負荷がかなり増してしまうからです。
ですから普段は、近所を散歩する程度で十分です。
それだけでも、地面からの衝撃などの負荷が少ない状態で関節の可動域維持・筋肉の機能維持の面でプラスに作用します。
また、散歩には運動による効果だけでなく、ストレス発散の効果もあります。
その意味では、ウインドーショッピングでもほぼ同じメリットを享受できるでしょう。
もし、「散歩をするだけでは物足りない」と感じたら、近所のプールに出向いて、「水中ウォーキング」をするのもお勧めです。
水中では浮力が働くので、関節にかかる負荷はほとんどゼロ。
陸上で動かす場合と比べて、関節を傷める心配も少なくてすみます。
一方、水圧に逆らって前進するので、筋肉を効率的に刺激でき、関節の可動域維持の効果も持ち合わせています。
ただし、関節リウマチの大敵である冷えを防ぐため、温水プールで行うようにしてください。
散歩にしても水中ウォーキングにしても、時間や頻度に決まりはありません。
痛みがなく、「体を動かしたい」と思ったら行えばいいですし、「外に出たくもない」という気分のときは、やらなくてもまったくかまいません。
〝自分の体からの声〟をよく聞いて、無理のない範囲で気持ちよく行ってください。
楽に動けるようになる「靴のポイント」
外出時に履く「靴」では、関節リウマチのかたが歩きやすくなる目安があります。
・かかと(ヒール)の高さは2~3㎝以下
・かかと・土踏まずの部分がしっかりサポートされるもの
・インソール(中敷)に適度な硬さがあるもの
・靴底にはクッション性のあるもの
・脱ぎ履きが簡単で、履いたときに靴の中で指を曲げたり動かしたりできるもの
【こんな靴を選ぼう】
こうした特徴のある靴を選んで履くようにすると、特に下半身の関節に症状があるかたでは、ぐっと楽に動けるようになるはずです。
服・アクセサリー・バッグの選び方
身につけるものでは、服は「柔らかい素材」「肌触りのいいもの」をチョイスするといいでしょう。
そうした服ならば、仮に外出先で関節の違和感が出ても、動きを邪魔しないからです。
逆に、硬い素材・肌触りの悪い服を着ていると、痛みが増すケースがよく見られます。
アクセサリー類は、出かける間だけつけるものならば、それほど気にしなくていいと思います。
おしゃれをしたいという気持ちを我慢する必要はありません。
ただ、あまりに大きくて重い指輪は、避けておくほうが安全です。
また、特に指輪に関して言うと、手の指の第2関節が腫れることで、好きな指輪を思いどおりに外したりつけたりできないことがあります。
また、以前はそうでもなかったのに、きつく感じられるケースもよく見られます。
となれば、腫れが治まったときなどに外し、そのまま生活すればいいようですが、例えば「結婚指輪だから常に身につけておきたい」という人もいらっしゃいます。
そうした場合は、腫れがだいぶ治まるまでの間、一度外してネックレスとして身につけておくように提案しています。
バッグでは、ショルダーバッグやハンドバッグなど〝体の片側だけに掛けるもの〟だと、肩やひじなど1つの関節だけに負荷が集中してしまうので、注意が必要です。
理想を言えば、バッグの中身を含めた重さを全身に分散でき、しかも両手を空けられるリュックということになります。
どうしてもリュックを使えず、ショルダーバッグやハンドバッグを使わなければならない場合は、最低限のものだけ入れて軽くし、左右でこまめに持ち替えるようにしましょう。
「冷え」「温度差」はアイテムで賢く予防!
関節リウマチの症状があるかたにとって、「冷え」は厳禁です。
冷えれば冷えるほど、痛みを感じやすくなり、度合いもひどくなりやすいのです。
頭の先から足先まで、できるだけ温かい温度を一定に保てるように意識してください。
冬だけでなく、夏も空調機からの風に注意するようにします。
外出するときは、屋内と屋外の「温度差」の影響を少なくする工夫をするようにお勧めします。
手袋・マフラー・ショール・スカーフ・ひざかけ・厚手のソックスなどをフル活用し、手足の指などの末端を中心に、関節が冷えないように注意しましょう。
また、家の中でも、入浴の前後、部屋と廊下を出入りするときには温度差が生まれやすいので、気を配ってください。
ちなみに、こうした「温度の差」のほか、「気圧の差」「湿度の差」も、関節リウマチの悪化要因になります。
この2つについては、対策が取りにくい問題なのですが、台風や雨が来る前に関節の痛みが増すのは、気圧と湿度が大幅に変わるからなのです。
天気予報などで事前に情報を得て、外出の予定が入っている場合には日程をずらすなど、無理をしないようにしましょう。
ストレスは〝ゼロ〟を目指さず〝うまく発散〟
ストレスも関節リウマチが悪化する要因になります。
しかし、現代社会で毎日暮らしている限り、〝防ぎようのないもの〟という一面もあると思います。
そのため、当院の患者さんに対しては、「ストレスのない状態が理想ではありますが、ゼロにするのは難しいので、うまい発散方法をいくつか持つようにしましょう」とアドバイスしています。
旅行するのでも、映画を観るのでも、どんなことでもかまいません。
自分がストレス発散を感じられる趣味を持つことをお勧めします。
そして、〝受けなくていいストレス〟は、うまく避けるように生活していくのがいいでしょう。
そう考えると、人間関係でストレスを感じる人は非常に多いので、体調を崩してまで「嫌な人」「付き合いたくない人」に会わなくてもいいと思います。
仕事上でどうしても会わないといけない人の場合はしかたありませんが、避けることができるストレス相手とは、極力会わないようにしていいと思います。
イラスト/松野 実
関節リウマチの正しい知識や、最新治療を受けるためのアドバイスを5章にわたって解説