抗リウマチ薬の登場で「寛解」「完治」が可能に! 関節リウマチの「新しい診断基準」とは

患者&予備軍が700万人に上るといわれ、痛みとともに手指が曲がってしまう難病の「関節リウマチ」。これまで「不治の病」と思われてきたこの病気の治療法は、実は新薬の登場で劇的に変化しているのだそうです。そこで、10万人の患者を救ってきたリウマチの専門医・湯川宗之助さんの著書『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』(KADOKAWA) より、「リウマチを治すための最新情報」をご紹介します。

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診断・分類基準・評価指標も大きく進化して確立された

関節リウマチは、「問診」「触診」「血液検査」「画像検査」で判明したことをもとに、診断基準に照らして分類・診断が行われ、治療が開始されます。

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そして実は、この「診断基準」にも、すばらしいパラダイムシフトがもたらされているのです。

2009年までの関節リウマチの診断では、米国リウマチ協会(ACR)が1987年に作った基準が使われていました。

診断基準の項目はわずか7つで、そのうちの4つが該当すれば、関節リウマチとの診断が確定していました。

しかし、これでは初期の関節リウマチは見落とされがちで、〝関節リウマチという診断が確定するのは病気が進行してから〟という問題がありました。

その背景には、昔ながらの治療方針があります。

以前は、すぐれた抗リウマチ薬がほとんどありませんでした。

おかげで、「まずは鎮痛薬から始め、それで効果が出なければ〝副作用が起こるかもしれない抗リウマチ薬を徐々に加えていく〟」という方法(ステップアップ法)が採用されていたのです。

そのため、どんな薬を使ったとしても、結局は関節が破壊・変形してしまい、最終的には手術を受けるというのがほとんどのパターンでした。

言い方を変えれば、〝早期に診断する必要もなかった〟のです。

抗リウマチ薬の登場で「寛解」「完治」が可能に

そんな状況を打破したのが、従来のものと比べて格段に効果が高くなった抗リウマチ薬の登場です。

抗リウマチ薬については後ほど詳しくお話ししますが、日本では1999年に、「メトトレキサート」(商品名:リウマトレックス)という世界的に第一選択薬になっている薬を使えるようになりました。

また、2003年には、やはり効果が非常にすぐれた生物学的製剤「レミケード」(一般名:インフリキシマブ)が使えるようになり、その後も続々とすばらしい薬を使えるようになって、抗リウマチ薬に大変革が訪れたのです。

そして、こうした薬の登場で、関節リウマチの治療目標は「痛みを抑えること」から「寛解(かんかい)」「完治」へと大きく変化しました。

同時に、「関節が破壊・変形される前に使うべき」であり、それによって「関節の破壊・変形を抑えられる」ということも判明したのです。

その結果、診断基準にもパラダイムシフトがもたらされ、早期の関節リウマチも発見できる診断基準が2010年に作られ、現在使われているわけです。

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完治のために知っておくべき「疾患活動性」

「診断がつき、関節リウマチであることが確定すること」と「実際の治療が始まること」の間で、患者さんと医師が共有すべきは「治療目標を立てること」です。

治療目標とは、現在の病気の状態=〝現在地〟から治療を始めた先にある〝目的地〟を明確にし、前に進んでいくためのものです。

基本的に、最初に目指す目標は、寛解です。

寛解とは、関節リウマチを薬でコントロールでき、痛み・腫れなどの症状がほぼ治まっていて、「なんともなく暮らせる」という状態です。

この寛解には、厳密に言うと、「臨床的寛解」「構造的寛解」「機能的寛解」の3つがあります。


●臨床的寛解
関節の痛みや腫れがなく、炎症がない状態。痛い関節の数と、客観的な活動指標をもとにした寛解。通常、毎回の診療、定期検診ごとに確認。

●構造的寛解
新たな骨の破壊がなく、関節破壊の進行が抑えられている状態。両手・両足の関節の画像検査の結果、関節の破壊(骨びらん・関節裂隙(れつげき)の狭小化=関節の隙間が狭くなってしまうこと)が進行していないと確認できる寛解。通常、1年ごとに確認。

●機能的寛解
日常生活を送るための体の機能が改善している状態。チェック形式のHAQというテストで、日常生活動作を制限なく行えていると確認できる寛解。通常、毎回の診療、定期検診ごとに確認。


これらのなかでも、まずは臨床的寛解を目指すのが重要とされているのですが、ここでもパラダイムシフトがもたらされています。

「現在の関節の状態」も、「目指す関節の状態」も、主観的であやふやなものではいけません。

「今の薬はなんとなく効いているかな」「まぁ、よさそうですね」などという〝アバウトな見立て〟も、本当はすべきものではないのです。

客観的ではっきりした指標で評価してこそ、早期の無駄のない治療を実現でき、治療が始まってからも薬の効果を判断でき、将来の関節破壊や変形を防ぐことに直結しているのです。

そこで、体の中の28の関節を細かくチェックして数値化した、世界共通の「疾患活動性」という指標をもとに、治療目標を設定するようになっています。

その疾患活動性の指標としては、「DAS28」「SDAI」「CDAI」という3種類がありますが、複雑な数値の算出は医師が行うので、心配は無用です。

患者さんが知っておくべきことは、その数値によって「寛解(臨床的寛解)」「低疾患活動性」「中疾患活動性」「高疾患活動性」の分類が決まるということ。

さらに、現在の自分が「低」「中」「高」のいずれの疾患活動性であり、いつ頃までにどの疾患活動性を目指すのかということを、医師と共有しておくべきなのです。

そうすれば、病気の抑制具合や進行具合、抗リウマチ薬の効き具合などを客観的な数字として確認でき、治療戦略をアレンジすることも、よくなっていることを確信することも、きちんとした裏づけとともに行えるようになります。

そして、「DAS 28 」なら2・6未満、「SDAI」なら3・3以下、「CDAI」なら2・8以下の数値になったら、「完全に寛解の状態に到達した」となるわけです。

もちろん、その後、薬がなくても寛解を維持できる「完治」を目指し、成し遂げるうえでも、減薬の影響などを判断するために疾患活動性が活用されます。

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関節リウマチの正しい知識や、最新治療を受けるためのアドバイスを5章にわたって解説

 

湯川宗之助(ゆかわ・そうのすけ)
湯川リウマチ内科クリニック院長。父、兄ともにリウマチの専門医というリウマチ医一家に生まれる。2000年、東京医科大学医学部医学科卒業。親子2代で50年以上にわたりリウマチの研究を続け、患者数や症例数は日本一を誇る。日本リウマチ学会専門医・評議員。

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『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』

(湯川宗之助/KADOKAWA)

患者と予備軍をあわせて約700万人に上るといわれる関節リウマチは、痛みとともに手指が曲がってしまう“難病”として多くの人に知られています。しかし、新薬の登場で関節リウマチの治療法は大きく変化しているそう。関節リウマチの正しい知識や、最新治療を受けるためのアドバイス、病院選びのポイントや、痛みを悪化させない生活習慣のコツなど、「リウマチを治すための最新情報」が満載の一冊!

※この記事は『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』(湯川宗之助/KADOKAWA) からの抜粋です。
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