緑内障と白内障をご存じでしょうか? いずれも年を重ねた大人女性は注意しておきたい目の病気です。そこで、東京都江戸川区の二本松眼科病院副院長の平松 類先生に、その予防法や最新の治療方法についてお聞きしました。今回は、「白内障の手術」についてご紹介します。
【白内障の症状】加齢で水晶体が濁りものが見づらくなる
水晶体が濁って、光を通しにくくなったり、光が拡散したりします。
老化現象の一つだが外的刺激も要因に
白内障は目の中の水晶体が濁ることで発症します。
水晶体はたんぱく質でできていて、透明な卵白が熱で白く固まるのと同じく、一度濁ると元の状態には戻りません。
濁る主な原因は加齢ですが、ボールが目に当たるといった強い衝撃、ステロイド剤の使用なども挙げられます。
目をかいたりこすったりする摩耗刺激も水晶体が傷つく原因に。
特に女性は化粧やコンタクトレンズをしたままかいたりこすったりする人が多いので注意。
【白内障】自分に合った手術で治す
《手術の主な方法》
点眼麻酔後、メスで角膜を2~3mm切開し、さらに前囊(ぜんのう―水晶体が入っている袋の前面)を円形に切り開く。
水晶体に超音波を当てて砕き、吸引して取り除く。
眼内レンズを挿入し、固定する。
見たいものや予算を考慮
数十年使うなら多焦点も濁った水晶体の代わりに目に入れる人工の眼内レンズは数種あります。
それぞれ見え方に特色があり、「夜間に運転する」「裁縫で手元をよく見る」といった自分の生活スタイルなどを考えて選びます。
「現在、単焦点レンズを選ぶ人は約95%。白内障患者はほぼ老眼なので、『遠く』にピントを合わせ、手元はいままで通り老眼鏡を使う人が多いです」(平松先生)。
症状が軽いうちは、進行を遅らせる目薬が処方されることも。
《眼内レンズの選び方》
ほとんどの人が単焦点レンズを選択
《レンズの種類》
●単焦点レンズ
「遠く」「近く」「中間」のどれか一つの距離がはっきり見えます。ピントが合う以外の距離を見るには眼鏡を使用。
●2焦点レンズ
「遠く」「近く」ともにピントが合い、眼鏡不要で過ごせる場合もありますが、全体的にピントは若干甘め。
●3焦点レンズ
2019年に国内での製造販売が認可されたばかり。「遠く」「近く」「中間」の3つの距離にピントが合います。
●EDOF(イードフ)
焦点の領域を広げる構造を持つ新しいレンズ。「遠く」から「やや近く」まで自然に見え、夜間も見やすくなります。
失敗が少ない手術でも油断禁物。失明の恐れも
白内障は手術で眼内レンズを入れれば治すことができます。
「目だけの局所麻酔で、手術時間も約10~20分と安全で簡単な方法が確立されていますが、気を付けたいのは目の感染症です」と、平松先生は注意を促します。
術後3日以内に感染症を起こすと失明する恐れもあるそうです。
術後は、目を手でこすって細菌が入ったりしないように注意が必要。
1カ月後にはほぼ普通の生活に戻れますが、この頃に目の奥に炎症が起きることも。
処方された目薬をきちんと使い、避けるべき行動は控えましょう。
《術後の注意点》
正しく過ごして感染症を防ぐ
紫外線や酸化・糖化物質が進行に大きく影響
目の水晶体は紫外線を吸収するとダメージが蓄積されるので、予防にはサングラスを使う習慣を。
また、水晶体が濁るのは老化現象ですが、その元凶となるのが細胞への酸化ストレスと糖化ストレス。
前者は紫外線や激しい運動などで発生した活性酸素により、後者は焦げた食品や甘い清涼飲料水に含まれる物質「AGE(終末糖化産物)」の摂り過ぎにより起こります。
酸化を抑制してくれるアントシアニンを含むブルーベリー、ルテインを含むほうれん草やゴーヤなどを積極的に摂りましょう。
《予防法》
サングラスと食品で目を守る
サングラス:色は薄めのものを。濃いものは視界が暗くなって瞳孔が開き、目に入る紫外線の量が増えます。
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/ノグチユミコ