<この体験記を書いた人>
ペンネーム:大家ぽん子
性別:女
年齢:64
プロフィール:主婦です。猫を飼っています。雑誌に「猫の毛皮は夏物だから暑くない」と書かれていて驚きました。
64歳の主婦です。
子供達は独立し、今は1歳上の夫と猫と暮らしています。
我が家で猫を飼いはじめたのは10年以上前です。
今いる猫は2代目なのですが、先代猫への、夫の思いがけない愛情深さに驚いた話をします。
「猫でも飼うか!」と言い出したのは夫でした。
聞いてみると、夫は幼いころ自宅で猫を飼っていて、もともと猫が好きだったようですが、娘たちが猫アレルギーだったため飼えませんでした。
娘たちが独立したので「そろそろ飼えるな」と思ったようです。
そして我が家に来たのは茶虎の子猫でした。
背中の縞々が見事だったので、「うりぼう」と名付けました。
「うりぼう」は気が優しく人好きの猫で、抱っこも嫌がらず、座っていると膝の上に飛び乗って、そのまま丸まるような猫でした。
夫にもよくなついていましたので、帰宅しては真っ先にうりぼうを探して抱っこして、当時流行していたサラリーマン川柳をもじって「父帰る~一番喜ぶ~猫のうり!」などと言っていました。
その猫が、猫の重病「猫伝染性腹膜炎」にかかりました。
なんとなく食欲がないな? と思っていたら、お腹を下しはじめ、みるみるうちに元気がなくなりました。
手を尽くしましたが治療の反応が悪く、どんどん病状が悪化していきました。
炎症を抑える薬を使い、藁にもすがる気持ちで猫の健康食品や猫仲間に聞いた食事療法なども試しましたが一向に良くならず、最後には獣医さんにももう治療法はないと言われました。
ここまで1カ月もかからなかったと思います。
みるみる痩せていくうりぼうの姿はショックでしたが、私よりショックを受けていたのは夫でした。
そこからの夫の行動が驚くほど愛情深かったのです。
日中は私が世話をしていましたが、帰宅してからや休日には、夫はほとんどつきっきりで、おなかを下す猫のトイレの始末を黙々と行いました。
床が汚れても、体が汚れても黙って猫の体を拭いてあげていました。
餌もいろいろな種類を試し、少しでも食べられるものを見つけてきました。
体が弱り、立てなくなった頃には、トイレに抱いて連れていっていました。
亡くなった時も猫のすぐそばにいて、静かに泣いている夫を見て私も泣きました。
しばらくは夫婦ともども何もする気が起きず、ぼーっと日々を過ごしていました。
しばらくして落ち着いた頃、夫と猫の思い出話をしながら、感謝の気持ちを伝えました。
「お世話大変だったよね。お疲れ様」
「大変なんて思ったことなかったよ」
夫の返事に少し驚きました。
私たちが子育てをしていた頃、時代もあるのでしょうが、夫に子育てを手伝ってもらった思い出はあまりありません。
その時も今も「お世話をするとか、愛情を注ぐとか、そういうことが苦手な人なんだろう」と思い込んでいました。
でも、本当は仕事が忙しかっただけで、夫も愛情を注ぎたかったのかもしれないな。
そういえば、夫を好きになったのもこの優しさに惹かれたからだったなあ...うりぼうのおかげで、いろいろなことを思い出しました。
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