炭水化物はダイエットの大敵で、糖質だから食べる量を減らしたほうがいい...そう思っている方、いませんか? でも、「腸活先生」と呼ばれる笠岡誠一先生は「これらの考え方は間違いで、冷まして食べるだけで、とても体によくなります」と言います。そこで、笠岡さんの著書『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』(笠岡誠一/アスコム)より、「炭水化物を健康食に変える一工夫」や「冷ましたご飯が腸内環境改善につながる理由」などをお届けします。
食べ物ではなく便で健康状態をチェック
自分が健康にいい食生活をしているかチェックするために、いちいち記録したり覚えたりするのは大変です。
手っ取り早い方法があります。
それは、毎日の「便」の状態をチェックすることです。
からだからの「お便り」だと思って、しっかり観察してみましょう。
黄褐色でバナナ状の便が、息まなくてもスルッと出るのが理想的。
たくさんの量が出れば、腸のぜん動運動が活発になっている証拠です。
便は、80パーセントは水分、残りは食物繊維、腸内細菌、大腸の粘膜がはがれたもので構成されています。
量を増やすには、レジスタントスターチをたっぷり摂取することが大切。
大腸内の有害物質とともに便が作られていきます。
穀類やイモ類を主食としているアフリカの人たちは、1日に400~800グラムも排便するそうです。
日本人の平均は200グラムですから、すごい量ですね。
アフリカでは、動脈硬化や心臓病、大腸がん、糖尿病などの病気がほとんど見られないといいます。
その理由は、レジスタントスターチや食物繊維の摂取量が多く、腸内環境が先進国の人たちより整っているからだと考えられています。
私たちもレジスタントスターチを食べて、健康的な便を排出しましょう。
下記に健康的な便かチェックするリストを作ってみました。
毎日のウンチチェックの参考にしてみてください。
便秘になりやすい人は、そもそも便になる食物繊維が不足していたり、善玉菌の活動が弱い可能性があります。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維両方の働きを持つレジスタントスターチの摂取によって、改善が期待できるでしょう。
便秘同様、下痢も腸内環境が乱れて起きる不調です。
大腸は、食べ物の水分を吸収して便を作っていきます。
腸のぜん動運動がうまく働かず、水分を吸収する能力が下がると、便が固まらずに下痢になってしまいます。
レジスタントスターチは腸内細菌の「エサ」になり、エサを食べた腸内細菌は酪酸などの短鎖脂肪酸を生み出すとお伝えしました。
実はこの短鎖脂肪酸は、腸の水分を吸収する働きにも関わっています。
短鎖脂肪酸の量を増やすと、水分の吸収が正常化し、下痢を緩和させることができます。
大きなウンチは有害物質の濃度を下げる
レジスタントスターチは大きなウンチ作りに貢献し、腸にたまった老廃物や有害物質をすばやく体外に排出してくれます。
また、レジスタントスターチには腸の中の便の有害度を下げるパワーまであります。
同じ量の有害物質が便の中にあった場合、仮に便の量が2倍になっていれば、それだけ便全体の有害物質の濃度は2分の1になります。
体内の有害物質は、濃度が高いほど、からだに与える悪影響が大きくなってしまいます。
レジスタントスターチは、腸の中にとどまっている便の有害度まで下げてくれているのです。
●毎日の便で健康状態をチェックしよう!
炭水化物を食べなくなって大腸がんが急増している
2018年の統計では、女性でもっとも死亡数が多いがんは、大腸がんです。
男性では肺がん、胃がんについで3番目に死亡数が多くなっています。
50年前と比べると、女性は7倍、男性は9倍も増加しています。
罹患者数は、1年間で約16万人もの数になります。
大腸がんの発症には、生活習慣、特に食生活との関連性が強く指摘されています。
日本人の食生活が炭水化物を減らす方向にシフトしてから、急激に患者数が増えたがんの一つです。
繰り返しますが、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、炭水化物の摂取量は1955年には1日411グラムありました。
しかし、2018年には251グラムまで低下しています。
1日当たりのエネルギー摂取量も減少、米の摂取量も低下しています。
炭水化物の摂取量が減少するのに反比例するように、大腸がんにかかる人が急増しています。
疫学的な研究で、炭水化物(でんぷん)の摂取量が減ると、大腸がんの発症頻度が上がるという報告もあります。
大腸がんの発症には腸内細菌が関わっている
2019年、大阪大学などの共同研究チームは、大腸がんの発症に関する腸内細菌を特定し、アメリカの医学誌「ネイチャーメディシン」に研究論文を発表しました。
国立がん研究センター中央病院で大腸検査を受けた616人を対象に、便の分析、内視鏡検査データの解析、食生活に関するアンケート調査を行ったところ、がんの発症から進行がんに至る過程で、腸内細菌が大きく関係していることが判明。
大腸がんの発症初期には、アトポビウム、アクチノマイセスなどの悪玉菌が増えており、一方、ビフィズス菌などの善玉菌の数が減っていることがわかったのです。
このことから、腸内フローラを善玉菌優勢にすることで、大腸がんの予防につながることが期待されています。
なぜ、ただの食物繊維よりレジスタントスターチがいいのか
また別の研究では、腸内環境が悪いと、フェノールやパラクレゾールなどの発がん性物質が作られることが判明しました。
しかし、レジスタントスターチには、この発がん性物質の生成を抑える働きがあることが同時にわかっています。
ラットに、食物繊維を含まないエサ、不溶性食物繊維(セルロース)入りのエサ、レジスタントスターチ入りのエサを与え、盲腸の中に発がん性物質がたまるかを調べました。
すると、レジスタントスターチ入りのエサを食べたラットは、盲腸内に含まれる発がん性物質の濃度が圧倒的に下がったのです。
このように、レジスタントスターチは、腸内環境を整えて大腸がんを予防するだけでなく、発がん性物質を取り除く効果も期待できます。
普通の不溶性食物繊維では、直腸まで善玉菌を届けることができません。
レジスタントスターチは、肛門手間の直腸まで善玉菌を届けることができるので、大腸がんの中でも特に患者数が多い直腸がんを予防するためにも有効だといえるのです。
善玉菌が生む「短鎖脂肪酸」でがんの増殖をブロック
レジスタントスターチは、善玉菌の「エサ」になり、エサを食べた善玉菌は、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの「短鎖脂肪酸」を作り出します。
この中の「酪酸」が、大腸がん予防にすごくいいんです。
通常の細胞はブドウ糖をエネルギー源としていますが、大腸の粘膜にある細胞は、酪酸を主要なエネルギー源として取り込み、正常に働き続けています。
そのため酪酸の量が不足していると、エネルギー不足に陥り、細胞ががん化してしまう可能性があるのです。
つまり、レジスタントスターチによって酪酸を増やしていけば、大腸がんの予防につながります。
また酪酸は、がん抑制遺伝子である、P53遺伝子を活性化する能力も持っています。
P53遺伝子が活性化すると、がん化した細胞が増殖するのを防いだり、死滅させたりと、がんの発症リスクを下げることができるのです。
レジスタントスターチは、発がん性物質の発生を抑えるのみならず、遺伝子レベルでもがんの増殖を防ぐための効果を発揮するのです。
大腸がんが国民病となりつつある現在、その救世主はレジスタントスターチといえるかもしれません。
【まとめ読み】『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』記事リストはこちら!
冷製の「炭水化物」が腸内環境を整え、日本人の健康につながる理由が全4章にわたって紹介されています。