「最善を期待して、最悪に備える」がん患者専門の精神科医が教える「死ぬまでの恐怖」への対処法

「やりたいけど、まあいいか...」いろいろなことを先延ばしにしがちなあなたに、生きるためのヒントをお届け。今回は、3500人以上のがん患者と向き合ってきた精神科医・清水研さんの著書『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)から、死と向き合う患者から医師が学んだ「後悔しない生き方」をご紹介します。

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死に至るまでの苦しみへの対策はある

人が「死」と向き合うには、死にまつわる問題を3つに分類すると整理しやすいと思っています。

その一つ「死に至るまでの過程に対する恐怖」は、「がんは進行すると痛いとか言われているけれど、死ぬまでにどんな苦しみが待っているのだろうか」という、肉体的苦痛に対する懸念のことです。

がんなどの病気に罹患した方の多くがこのことを心配されます。

がんの場合、確かに以前は「壮絶な闘病生活が待っている」というイメージを強調するような報道、小説、映画などの作品が多くありましたので、一般の方が心配されるのも無理もないことだと思います。

しかし、近年は状況がだいぶ変わってきた印象があります。

例えば私は病棟を毎日回診で訪れますが、患者さんとご家族が和やかに談笑されている姿にあちらこちらで出会います。

看護師や医師など医療者もにこやかで、病棟の雰囲気に重苦しい印象はありません。

もちろん、中には様々な苦しみを抱えておられて精神的に追い詰められている方もいらっしゃるかもしれませんが、医療の現場を見ていただくと、「壮絶な闘病生活」という印象とはだいぶ異なることを実感していただけると思います。

では、死に至るまでの苦しみとは、実際にはどのようなものなのでしょうか。

例えば、国立がん研究センターが一般の方向けに作成している『がん情報サービス』というウェブサイトの中には、がんの療養と緩和ケアに関する項目があり、がんに伴う体の痛みの多くは、鎮痛薬を適切に使うことで癒すことができること、現在は苦痛をやわらげるための技術(緩和医療)が進歩していて様々なサポートが得られることが具体的に書かれています。

そして、近年は緩和医療の対象が拡がり、がん以外の疾患でも体のつらさを和らげる治療を受けられるようになる動きがあります。

何も知識がないと、頭は悲観的な想像をいくらでも考え出すので心配になりますが、実際にどのように苦痛を和らげることができるのか、正しい知識を得ることは安心につながると思います。

重い病に罹患した時の心構えとして、「最善を期待し、最悪に備えよ(Hope for the best. Prepare for the worst.)」という言葉があります。

近年、医学は進歩し、例えばがんの領域ですと、質が悪いと言われた肺がんの治療成績が飛躍的に改善していたりしますので、「まだまだ自分の治療はうまくいくはずだ」と期待することは当然だと思います。

一方で、病状が進行する可能性にもきちんと保険をかけておくという意味で、苦しい症状をきちんと取り除いてくれるような緩和医療へのアクセスを確保しておき、療養できる場所の準備(現在は在宅ですごすための医療・介護サービスも以前に比べて充実してきています)をしておけば、「死に至るまでの過程に対する恐怖」に対処することもできるでしょう。

【最初から読む】がん患者専門の精神科医が伝えたい「人生で一番大切なこと」

【まとめ読み】『もしも一年後、この世にいないとしたら。』記事リストはこちら!

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病気との向き合い方、死への考え方など、実際のがん患者の体験談を全5章で紹介されています

 

清水研(しみず・けん)

1971年生まれ。精神科医・医学博士。2006年から国立がんセンター(現、国立がん研究センター)中央病院精神腫瘍科勤務となる。現在、同病院精神腫瘍科長。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医を務める。

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『もしも一年後、この世にいないとしたら。』

(清水研/文響社)

3500人以上のがん患者と対話してきた精神科医が伝える死ぬときに後悔しない生き方をまとめた一冊。病気への不安や死の恐怖とどう向き合えばいいのか、実際の患者の体験談とともに紹介。人生の締切を意識すると明日を過ごし方が変わり、人生が豊かになります。

※この記事は『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(清水研/文響社)からの抜粋です。
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