「やりたいけど、まあいいか...」いろいろなことを先延ばしにしがちなあなたに、生きるためのヒントをお届け。今回は、3500人以上のがん患者と向き合ってきた精神科医・清水研さんの著書『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)から、死と向き合う患者から医師が学んだ「後悔しない生き方」をご紹介します。
人生で一番大切なことは何か考えると行動が変わる
今日一日をすごせることが当たり前ではないことに気づき、感謝の念が湧くと、人は貴重な時間をどのように過ごすのかを一生懸命考えるようになります。
人生においてほんとうに大切なことは何か、その優先順位を考え、生きがいについて深く考えるようになるのです。
50代で喉頭がんになられた男性が語られたことですが、その方は「節約」を日々心がけ、ご本人いわく、貯金通帳を眺めている時間に喜びを感じるような暮らしを続けておられたそうです。
でも、がんになったことで、使い道を考えずにただ貯金をすることになんの意味があるだろうか、と考えるようになりました。
お金の役割は、なにか。
これまでは、家族のためにお金を殖やす、残すことが大事だと思っていたけれど、大切な家族といい時間を過ごすためにあるのではないか、そう新たな視点をもつようになったそうです。
お金を使うことは悪ではなく、大切な人のために、自分のやりたいことのために使うことにこそ意味があるのではないか。
こんな風に、病気を機にお金に対する価値観が変わられる方も多いように思います。
また、63歳で肝臓がんになられた男性は、新聞記者を経てコンサルティング会社を立ち上げて、会社を守るために忙しい毎日を送っておられました。
やりたいことをやるために会社を立ち上げたはずなのに、気が付けばいつしか自由がなくなっていたそうです。
この方は、阪神・淡路大震災の時に神戸支局に在籍しておられ、震災で自宅が半壊し、一歩間違えば命を失うところだったそうです。
自らも苦しみを抱えつつ、この状況を伝えなければという使命感から取材を続けられ、その中で大切な家族を亡くした人など、胸が張り裂けそうな様々な状況を目にしたそうです。
その時取材した人々の語りがずっと心の中にあり、その想いを伝える書籍を書きたいと思っていながら、忙しい毎日の中でそのことはどんどん先延ばしになっていたと話して下さいました。
しかし、肝臓がんになり自らの人生の期限を悟ったこの方は、部下に会社を譲り、事業から一切手を引いたそうです。
そして、ご自身の体験を伝えるための活動を始められました。
この方のように、会社を退くような大きな決断は簡単にできるものではないし、衝動的に行ってしまうことは後悔につながることもあります。
しかし、「いつかはやりたい」と思っていることがあったとしても、人生には期限があることを意識しないで「そのうちやればいいや」と先延ばしにしていると、結局実現しないまま終わってしまうこともあります。
あなたのこころが「絶対にやりたい」と言っているものがあるのならば、どのような形でやれば実現できるのか、いつ始めたらよいのか、機会をしっかりとうかがって準備されることをお勧めします。
【まとめ読み】『もしも一年後、この世にいないとしたら。』記事リストはこちら!
病気との向き合い方、死への考え方など、実際のがん患者の体験談を全5章で紹介されています