「自分が望んだ検査」や「ほしい薬」の処方をしてもらえず、お医者さんに満足できない...実はそれ、あなたの「病院のかかり方」に問題があるのかもしれません。そこで、多彩な情報発信をしている現役医師・山本健人さんの著書『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)より、「知っておくと、もっと上手に病院を利用できる知識」をご紹介。医師&病院の「正しい活用術」を、ぜひ手に入れてください。
医者から「様子を見ましょう」と言われると不安です。自分で何かできることはないでしょうか?
【答え】
① 自分の症状を丁寧に観察し、変化があれば報告できるように準備しておきましょう
② 症状に大きな変化があれば、再び病院に行きましょう
医者の「様子を見る」にはたくさんの意味がある
医者から「様子を見ましょう」と言われると、不安になってしまう患者さんがいます。
きっと、「様子を見る=放っておく」と感じてしまうからでしょう。
前回の記事では、早期発見が過剰に叫ばれる危険性について述べました。
関連記事:「偽陽性」という言葉をご存じですか?「早期発見のための検査」のリスク
「早期発見でないと病気は治らない」という考えに飛躍してしまうと、医者に「様子を見ましょう」と言われたら、「病気が早期発見できなくなるのではないか」と不安になってしまう方もいるのですね。
もちろん、医者が患者さんを「放っておく」はずがありません。
もし、患者さんが不安に感じたなら、それは医者の説明が不十分だったからかもしれません。
医者が使う「様子を見る」という言葉には、実は広い意味があります。
これを大きく分けると、次の2つのパターンがあります。
一つは、「時間をあけてもう一度診察や検査をしてみて、今と比較して病状の変化や傾向を見る」ということです。
たとえば、一定の治療を終えて一旦症状がおさまっているものの、完全に治ったとは言えないケースでは、いつか病状が思いもよらぬ方向に変化するかもしれません。
もしかしたら、この先ずっと安定したままかもしれませんが、逆に患者さんの自覚症状がないまま水面下で病状が悪化するかもしれません。
そこで「様子を見る」ために、「数ヶ月後、もう一度同じ診察や検査をしてみましょう」ということになります。
また「偽陰性」が疑われる、というケースもあります。
患者さんは確かに何らかの症状があるのに、診察や検査をしても「異常」は見当たらない。
そんなときは、一旦時間を置いて様子を見たのち、もう一度受診していただく、という方法をとります。
最初は検出できなかった異常が、時間を置くことで検出できるようになるかもしれないからです。
最初からすべてが明らかになることの方が少ないため、一旦「時間を置く」という戦略は大切なのです。
もう一つのパターンは、「治療や精密検査の必要はなく、定期的な通院の必要もないけれど、何か症状があったときにはすぐに来てほしい」というものです。
次の診察や検査の時期は決めないまま、症状が変化するかどうかをしばらく観察しなければならないときがあるのです。
症状が変化したときに、「次にどんな手を打つべきか」が初めて明らかになることもよくあります。
もちろん、「症状の変化」を自分で判断するのが難しいケースは多いでしょう。
その場合は、「どんな変化があったら病院に来ればいいか」を具体的に医者から聞き出しておくことが大切です。
医者は安易に「大丈夫」とは言えない
患者さんの中には、医者から「もう大丈夫ですよ」と言われないと安心できないという人が多くいます。
医者に病気を治療してもらうためではなく、医者から「大丈夫」という太鼓判を捺(お)してもらうために病院に行く、という人もいると思います。
しかし、多くの患者さんを診療して実感するのは、本当に「大丈夫」と言いきれる場面はとても少ないということです。
「ほとんどない」と言ってもいいかもしれません。
医者が言えるのは、「今、この時点では精密検査を行ったり治療を始める必要はありません」ということだけです。
これは、「今の時点に限っては大丈夫」ということは意味しますが、言葉の裏には、「今後もずっと『大丈夫』というわけではありませんよ」という思いがあります。
こういうときに医者が使うのが「様子を見ましょう」です。
「大丈夫」と言う代わりに、「様子を見て、適切なタイミングで次の対処法を考えましょう」と言っているのです。
【まとめ】『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』記事リスト
医師や医療行為への「よくある疑問や不安」を、Q&A方式でわかりやすく解説! 「医学のスペシャリスト」を上手に利用するための「34のエッセンス」が詰まっています