水分&塩分だけじゃないんです。夏場の疲労回復に「鉄分」のススメ

外出自粛が段階的に緩和され「夏はどこかに出かけたいな...」という人も多いのでは? そこで注意したいのが、熱中症や夏バテ。特に熱中症は昨年7万人以上の人が救急搬送され、死者は126人に達する(2019年5~9月、総務省消防庁の集計結果)など、外出自粛で体力が落ちている今年は例年以上に注意が必要です。そこでぜひおすすめしたいのが「鉄分」の摂取。熱中症や夏バテの予防で「水分や塩分摂取」は知られていますが、近年の研究により鉄分の摂取が有効であることがわかってきたのです。

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夏バテ・熱中症の原因は...⁉

夏場にかけて増える熱中症は、体の血流機能の低下などにより深部体温が上昇し、オーバーヒート状態で汗をかくことで起きる脱水症状です。

汗にはミネラルが含まれることから、過剰な発汗により電解質バランスが崩れ、血流が低下し、失神やけいれんなどの脱水症状が発症するのです。

また夏バテは、暑さを皮膚で感じ「熱を逃がそう」とする一方で、エアコンが効いた室内に入ると逆に体温調節中枢が「熱の産生を促す」ことが起こります。

これを繰り返すと、自律神経のバランスが崩れます。

すると血流が悪くなり、血液が十分な酸素を運べず、全身の細胞が酸欠状態になるために起こります。

つまり夏バテも熱中症も、血流を正常化させることが対処法の一つとして考えられます。

「鉄分」が不足している日本人女性

そこで重要になるのが、体全体に酸素を運ぶという役割を担う「鉄分」です。

ところが日本人は、特に女性を中心に「鉄分の摂取量」が不足しています。

鉄分が不足すると貧血を起こしやすくなるのですが、日本女性は世界と比較して、約4~5倍も貧血人口が多いことがわかっています。

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そもそも不足している状態なのに、汗をかくことでさらに鉄分が失われています。

だからこそ、夏場での鉄分摂取は重要になってくるのです。

研究で証明された「鉄分摂取」の疲労改善効果

「鉄が不足すれば、疲れやすくなる、集中力がなくなる、貧血や立ち眩みが起きる、睡眠の質が悪くなる、不定愁訴が起きます。しかもこれらは、進行が緩やかなため、徐々に生活に影響を及ぼしていき、なかなか不調を自覚しにくいのです」

そう指摘するのは、スポーツの国際競技力向上に関する支援活動に携わる日本体育大学 体育学部の杉田正明教授。

杉田教授は、このほど、夏場を想定した疲労において、鉄分の継続摂取に改善効果があることを明らかにしました。

「鉄は、汗、尿、糞便などから排出されますが、1リットルの汗で約0.5mgの鉄が失われるとされていることから、夏場は特に注意が必要です。熱中症も、疲れを伴う夏バテも、共通するのは、体内からの鉄分などのミネラルの損失です。夏は外出時だけでなく、朝起きてから寝るまでにかなりの脱水が起きるため、意識して鉄分を摂取する必要があるでしょう」

1日に摂取したい「鉄分」の量は?

では、どれくらいの量の鉄分を摂るとよいのでしょう?

「過剰な鉄分の摂取をする必要はありません。今回私が行った夏場を想定した試験においても、日本人が不足しているとされる目安の3.6mgの鉄を1か月間継続して補うだけで、疲労や朝の寝起きの良さに改善がみられました」

杉田教授はこう言います。

また、鉄の吸収率は、腸内環境でも変わることがわかっています。夏場は氷やアイスなどを口にする機会も多く、胃腸が疲れやすいので、鉄の吸収率を下げないためにも胃腸など体調全体を整えることにも気をつかうことが大切です」

成人男性では約1mg、女性では約0.8mgの鉄が1日に損失しています。

さらに女性は月経により、1日あたりに換算してプラス約0.5mgの鉄が損失しています。

また、夏場は発汗量が多いことを考えると、プラス2mg前後の鉄が損失している計算になることから、夏場は毎日3.0mg前後の鉄分を補給する必要があると考えられます。

この損失する鉄を補うには、毎日の食事からしっかりと鉄など必要な栄養素をとることが大切です。

実は手軽に摂取できる「鉄分」

ヘム鉄を多く含む食品としてよくあげられるのが、レバー、卵黄(生)、アサリ、カツオ、マグロ、非ヘム鉄を多く食品では青ノリ(素干し)、岩ノリ(素干し)、焼きノリ、干しひじき、ごま、小松菜、ほうれん草などです。

最近ではコンビニなどでも、手軽に鉄分豊富な食品や飲料が手に入ります。

いくつかの商品をご紹介しましょう。

DAKARA.jpg「GREEN DA・KA・RA」(税別130円、600ml)
おなじみの熱中症対策飲料。2020年のリニューアルで「鉄分」をプラス。

l_sbf0976-1.jpg「サントリー天然水 うめソルティ」(希望小売価格131円、540ml)
こちらも鉄分を配合した飲料。梅の味わいとほどよい塩味の、すっきりとした後味が特徴。

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無印良品 コオロギせんべい(税込190円、55g)

ネットストア先行発売で話題となった、鉄分も多く含む「コオロギ」のパウダー入りせんべい。現在品切れ中で、7月中旬限定店舗にて販売予定(同社HPより)。

ほかにも野菜ではパクチーが鉄分を多く含むので、これからの季節、タイ料理でパクチーを楽しんだり、ほかの野菜や魚、肉と合わせたパクチーサラダにして摂取してみるのもいいですね。

鉄分でさらに「心理的ストレス」も軽減

さらに、かねてよりスポーツアスリートの栄養学の研究を重ねてきた大妻女子大家政学部の川口美喜子教授は、鉄分摂取が運動による疲労の改善とともに、「日常的な心理的ストレスを軽減すること」を、最新の調査で明らかにしました。

「最近の研究で低用量(3.6mg)の鉄摂取が、心理的そして肉体的な疲労感の両方を改善するという結果を得ることができました。3.6mgは、日本人が不足している鉄分にあたることから、薬理的に鉄分を投与するのではなく、足りてない不足分を継続的に少し補っていくだけで有効な結果が導きだされることが期待できます」(川口教授)

夏場の疲労回復および、ストレスの軽減にも効果が期待できる「鉄分」。

この夏、自分の体を労わるためにも、ぜひ意識的に摂取してみてください。

取材・文/栗山春香

 

<教えてくれた人>

杉田正明(すぎた・まさあき)
1966年三重県生まれ。三重大学大学院修了後、東京大学助手、三重大学教育学部助教授、教授を経て 2017年から現職。日本オリンピック委員会 情報・医・科学専門部会 情報・科学サポート部門長、日本スポーツ振興センター( JSC )ハイパフォーマンスセンターアドバイザー、日本陸上競技連盟 科学委員長などを務めている。2010FIFAワールドカップでは、 40 日間日本代表チームに帯同し、高地対策やコンディション管理を支援し、ロンドン、リオデジャネイロオリンピックや世界陸上ではマラソン・競歩代表選手をはじめ多くの選手の科学的支援を行ってきている。

 

川口美喜子(かわぐち・みきこ)
1957年、島根県生まれ。管理栄養士、医学博士・がん病態栄養並びにスポーツ栄養(病院栄養士)。 1981 年、大妻女子大学家政学部卒業、1993 年、島根医科大学(現・島根大学医学部)研究生修了。博士(医学)学位取得。同大第一内科文部教官を経て 2004 年より島根大学医学部付属病院栄養管理室長を務める。 2013 年より拠点を東京に移し、大妻女子大学家政学科食物学科管理栄養士専攻教授を務める。研究分野は、食生活学、身体教育学、公衆衛生学・健康科学。

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