「自分が望んだ検査」や「ほしい薬」の処方をしてもらえず、お医者さんに満足できない...実はそれ、あなたの「病院のかかり方」に問題があるのかもしれません。そこで、多彩な情報発信をしている現役医師・山本健人さんの著書『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)より、「知っておくと、もっと上手に病院を利用できる知識」をご紹介。医師&病院の「正しい活用術」を、ぜひ手に入れてください。
検診について知っておくべきこと
検査というのは、患者さんへの病歴聴取や身体診察の結果から必要だと考えられたときだけ行うべきものです。
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そして、その病状に見合った検査を行う場合に限り、保険診療で行える(保険がきく)、という仕組みです。
つまり、公費を投入して患者さんの金銭的な負担を1~3割まで安く抑えたり、高額療養費制度によって患者さんの払うお金を大幅に減らしたりするには、それに見合う確固たる医学的根拠が必要だということです。
そう考えれば、検査は患者さん自身が自由に選べるものでは本来なく、仕組みとして専門知識を持つ医者に要不要を厳密に判断させる必要がある、と言えます。
逆に、病状から必要とは考えられない検査なら、全額自費でしか受けられない、というのが原則です。
一方、検診は、何も症状のない人が「隠れた病気がないかどうか」を調べるために受けるものです。
病状とは関係なく受けられる検査ですから、原則、全額自費です。
その中のごく一部に、国民全体の健康上の利益につながることが証明されているがゆえに公費が投入され、安価で受けられるようになっているものがあります。
その代表的なものが、市町村が行う「がん検診」です。
これはいわば、例外的な検査なのですね。
こうした市町村で安価で受けられるがん検診は、「対策型検診」とも呼ばれ、大腸がん、胃がん、肺がん、子宮頸がん、乳がんの5種類が対象になっています。
これらのがん検診は、全国の市町村で数百~数千円といった安い価格で受けることができます。
いずれも、この検査を受けた人が受けなかった人より、そのがんによる死亡率が低いことが証明されているためです。
これらの検診は、ある年齢になると市町村から案内が送られてくるのが一般的です(自治体によっては、前立腺がんなど他のがんの検査を含めているところもあります)。
「体が健康かどうかを確かめたい」と思う人は、まずはこうした安価で有効な検診を優先的に受けるのがおすすめです。
会社に勤めている人は職場で検診を受けることがあると思いますが、こちらも市町村の検診にのっとって行われていることが一般的です。
では、これらに含まれない検査を受けたい場合はどうすればいいのでしょうか?
その場合に受けるのが、人間ドックなどの「任意型検診」です。
人間ドックが全額自費で高価である理由は、ここまでお読みの方ならわかるでしょう。
病状から必要と判断された検査以外に保険はきかないのが原則だからです。
職場の中には、人間ドックの受診費用を一部補助してくれるところもありますが、その他は基本的に自費です。
人間ドックでは、受けたい検査を患者さんが自由に選ぶことができます(まだ「患者」ではありませんが)。
全身のいろいろなところを好きなだけ検査してもらえるのが利点で、日本人間ドック学会が安全性と質を保証した検診施設を「機能評価認定施設」として公表しています。
ただし、人間ドックには「受けた人の方ががん死亡率が低いかどうか」が証明されていない検査も多く含まれています。
つまり、患者さんにとって本当にメリットがあるかどうかは誰にもわからない、という点に注意が必要なのです。
その一方で、検査にはさまざまなリスクがあります。
たとえば、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)には、大腸に傷がついて出血したり、穴が空いたりするリスクがあります。
レントゲンやCTなどは放射線を使うため、被曝という欠点もあります。
よって、こうした任意の検診を受ける前に、「必ずしもリスクよりメリットの方が大きいとは限らない」という点を理解しておく必要があるのです。
そして、優先的に受けるべきなのは、「死亡率の低下」という大きなメリットが証明された対策型検診である、という点を改めてお伝えしたいと思います。
さて、ここで、「検診を受ければどんな病気でも早期発見できるのだから、確実にメリットの方が大きいはずだ」と考えた人がいるかもしれませんが、それは大きな誤解です。
検査には、「偽陽性」と「偽陰性」という、患者さんの人生を左右しかねない非常に大きな欠点があるからです。
【まとめ】『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』記事リスト
医師や医療行為への「よくある疑問や不安」を、Q&A方式でわかりやすく解説! 「医学のスペシャリスト」を上手に利用するための「34のエッセンス」が詰まっています