いつの時代も怖い病気の代表に挙げられる「がん」。たとえ自分や家族が患ってしまったとしても、心の準備と備えがあれば、少しは気が楽になるかもしれません。そこで、1000件を超えるがん手術に携わった専門医・佐藤典宏さんの著書『手術件数1000超 専門医が教える がんが治る人 治らない人』(あさ出版)から、がんに対抗するために知っておくべき「5つの力」について、連載形式でお届けします。
ガンが治る人 家からの距離・専門性・治療患者数で病院を選ぶ/ガンが治らない人 1つの情報で病院を選ぶ
病院選びは、ガン治療の成否のカギをにぎる、最も重要なイベントであるといっても過言ではありません。
最もよい治療を受けるためには、最もよい病院を選ぶ必要があります。
とはいえ、どうやって自分にとってベストの病院を選べばいいかについては、あまり知られていません。
これまでさまざまな病院に勤務し、長年ガンの診療に携わってきた私がおすすめする方法は、いたってシンプルです。
それは、次の3つの条件を満たす病院です。
(1)自宅から通える病院
(2)スタッフや設備がそろった「ガン専門病院」
(3)自分と同じ種類(臓器)のガンの治療患者数が多い病院
まず大切なのは、自宅から通える病院であることです。
理想的には、片道1時間以内で通える範囲にある病院がいいでしょう。
ガン治療のための通院は、通常1、2回で終わることはありません。
手術を受けたとしても、術後の抗ガン剤や放射線治療のために何度も受診しなければならないことがあります。
また、少なくとも5年間は、定期的に再発のチェックで通うことが必要です。
調子が悪くなったときに、緊急で受診することもあるかもしれません。
ですから、できるだけ自宅から近い病院を選ぶほうが便利でしょう。
ただし、高度の技術を要する専門性の高い手術や、かぎられた施設でしか行っていない特殊な治療は、遠くの病院でしか受けられない可能性があります。
この場合も、できるだけ自宅の近くに急患対応や定期検査(たとえばCTや血液検査など)ができる病院を確保しておくことをおすすめします。
次に、全体としてガン患者さんの診療経験が豊富で、スタッフや設備がそろった病院であることが必須条件になります。
このためには、地域の「がん診療連携拠点病院」から選ぶのがいいでしょう。
「がん診療連携拠点病院」とは、全国どこでも質の高いガン医療を提供することができるよう、国が指定した専門的なガンの医療機関で、全国に401か所(地域がん診療病院は36か所)あります(平成30年4月1日現在)。
しかし、実際には、病院間での医療レベルに格差があることも事実です。
また、すべての病院がすべての種類のガンを幅広く診療しているわけではありません。
病院によって専門性が異なり、特定の種類(臓器)のガンの治療だけを、たくさん手がけているところもあります。
たとえば、消化器(胃や大腸)ガンの手術例数が多い病院もあれば、肺ガンの手術例数が多い病院もあります。
乳ガンの治療に特化した病院もあれば、血液ガン(白血病)に対する抗ガン剤治療の経験が豊富な病院もあります。
そこで、あなたのガンの種類について、病院での診療件数(たとえば1年間に実施した手術例数)を比べ、できるだけ患者数が多い病院を選びましょう。
手術例数が多い施設(病院)のことを「ハイボリュームセンター(highvolume center)」と呼びますが、ここで手術を受けたほうが、合併症が少なく、死亡するリスクも低くなることが、多くの研究で示されています。
病院ごとの患者数を調べるためには、インターネットや雑誌などの病院ランキングが参考になります。
また最近では多くの病院が、ガンの治療(手術)件数や治療成績(生存率など)について、それぞれのホームページに掲載しています。
これらを利用して、候補となる病院のガンの診療実績(診療患者数)を比較検討しましょう。
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心構えや情報収集のやり方などが全5章で解説。治療法ではなく、がんを治すために自分でやれることがまとめられています