よく寝たのにスッキリしない...なんで? その答えは、「疲労回復の方法は、人によって違う」と東洋医学の第一人者である中根一さんは言います。そこで、中根さんの著書『寝てもとれない疲れをとる本』(文響社)から、あなたの正解が見つかる「疲れの正体」と「体質別の疲労回復法」を連載形式でお届けします。
「長く休む」より「いい休みをとる」
「何となく体調が優れない」という理由で、病院を受診したことがある方は多いと思います。
しかしこれをアメリカやイギリスから来た患者さんにお話しすると、皆さんビックリします。
海外では多くの場合、具体的な症状が出てから病院に行くからです。
ちょっとした不調を病院で診てもらうことは、世界的に見ると、ずいぶんと奇妙なことのようです。
「日本人は病院と薬が好き」と、冗談まじりに言われることも多いですが、これは「東洋医学」の影響を少なからず受けた名残ではないかと思います。
というのも、「何となく不調なとき」こそが東洋医学が実力を発揮する場面であり、伝統的に日本人は、そうやって医療と付き合ってきたからです。
「何となく不調」なときこそ、じつは疲れをとるチャンス
東洋医学をひと言で表現するならば、「一人ひとりの体質や状態に合わせて、体に備わっている自己治癒力を効率よく発揮させる医学」と言えるでしょう。
約2000年前の前漢時代にテキストが編纂されて以来、多くの経験が積み重ねられてきました。
今日では、私たちがより健やかに快適に生きる知恵として、世界約180カ国の医療現場で臨床や研究が進んでいます。
「心地よさ」や「元気」というものは、「足りないからといって死ぬわけではないけれど、私たちの暮らしをよりよくしてくれる大切な要素であり、豊かさ」です。
このような「ちょっとしたマイナス(不調や不快感)から、プラス(快適・爽快感)に転ずる」という体感は、東洋医学がもっとも大切にしているものの1つです。
世の中に心身のメンテナンス法や、快適に過ごす工夫は数あれど、これにかなうものはありません。
だからこそ、フィギュアスケートの羽生結弦選手をはじめとして、世界レベルのアスリートや、トップクラスのビジネスパーソンの多くが、鍼灸のクライアントとして名を連ねているのでしょう。
東洋医学は、「末永く健康でいられるようにする」「今ある不調が別の不調を起こさないようにする」ということを目的としているため、しばしば「予防医学」と呼ばれます。
その特徴は、「何となくの不調の状態」を「未病(=未だ病ならざる)」という状態にあると捉え、治療の対象としていることにあります。
「病気になってから対処する医学」として発達した西洋医学との大きな違いは、「病気になる前に対処する医学」であるという点なのです。
そのため、東洋医学では不調段階で治す医師ほど優秀とされ、「上工治未病中工治已病(腕のよい医師は病気になる前に治すが、普通の医師は、すでに病気になった体を治す)」と教えられているのです。