甘く見ていると数年続く可能性も・・・覚えておきたい「咳のメカニズム」

「咳が1週間くらい長引いても自然に治るのを待つ」というあなた。放置していると全身に悪影響を及ぼすかもしれません。毎月2000人以上の患者を治療してきた呼吸器の名医・杉原徳彦先生は、実は悪さをしているのは「のどではなく鼻の奥」と言います。そこで、杉原先生の新刊『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』(あさ出版)から、「長引く咳」の正体から治療法までを毎日9:30に連載形式でお届けします。

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なぜ、鼻の炎症が長引く咳を引き起こすのか

なぜ咳の症状が、鼻の疾患によって数週間、数カ月、下手すると数年も続くのでしょうか。そのメカニズムを解説していきましょう。

咳が起こるメカニズムはいくつかあります。

1つが、「くしゃみ」と同じメカニズムで起こるもので、鼻が何らかの刺激を受け、異物への反射として起こる咳です。

鼻やのどには自律神経のうちの副交感神経に属する迷走神経が走っています。鼻に、ホコリや花粉、冷たい空気などの「異物」が入ると、この迷走神経が刺激され、それらの異物を体の外に出すために、咳やくしゃみをするわけです。

たとえば、電車に乗った瞬間や、スーパーの冷凍食品売り場に近づいた瞬間、非常に匂いが強い場所に入った瞬間、エアコンの風に当たった瞬間などに、突然咳が止まらなくなった経験は、みなさんもあると思います。

ちなみに、このような咳は、痰をともなわない「乾いた咳」になります。

また、気管内にある痰などの異物を、体の外に出すときに起こる咳もあります。

たとえば、のどに痰がからむため、何度も咳払いをしてしまうときなどです。この場合は、痰などの分泌物を含むため、「湿った咳」になります。

そのほか、咳ぜんそくのような、気管支粘膜に炎症が起きていることで刺激に対して敏感になり、咳が発生する咳もあります。

こちらも、くしゃみと同じメカニズムで、迷走神経(この場合は気管支に走っているもの)の反射によるものですが、咳の起きている場所が「鼻」ではなく、「気管支」という違いがあります(この場合も、基本的には痰はありません)。

「鼻」が原因の咳の症状

鼻に何らかの疾患がある場合は、鼻の中(鼻腔-びくう)に炎症が生じたり、その粘膜が腫れ上がり、空気の通り道が狭くなったりといったことが起こります。そのため、体に入ってきた異物に対して敏感になり、先ほどのくしゃみと同じメカニズムの咳(乾いた咳)が出やすくなります。

私たちの体は、健康な状態でも、つねに鼻水の一部はのどへと流れ込み、鼻やのどを保護しています。しかし、鼻に炎症があると、分泌される鼻水の量が増えたり、その粘りが強すぎたりします。

それがのどに垂れてくることで、痰がからんでいるような感覚になります。この症状を「後鼻漏(こうびろう)」といい、これを取り除こうと咳払いを頻繁にくり返します。

これはいわゆる「湿った咳」になります。

痰がからむ咳は、気管支や肺などのどから下の部分に問題があり、それが原因だと思いがちですが、じつは鼻水がのどに垂れてきていることも多いのです。

さらに、鼻の疾患をそのままにしていると、炎症が気管支にまで広がります。そうなると、今度は気管支で起こるくしゃみタイプの咳が起こりやすくなります。

そして、こうした鼻の炎症が原因で起こる咳は、そのもとの鼻の疾患を治さなければ、症状はなかなかよくなりません。

逆に、鼻に疾患があることを突き止め、そこを治療していくことで、鼻が原因の咳を鎮めていくことができるのです。

実は鼻の炎症が原因かも!?「つらいせきが続いたら」記事リストはこちら!

甘く見ていると数年続く可能性も・・・覚えておきたい「咳のメカニズム」 030-shoei.jpg4章にわたり、長引く咳の原因と対策を網羅。咳対策用の枕、マスク、お茶の選び方などセルフケアの実践方法も紹介されています

 

杉原徳彦(すぎはら・なるひこ)

1967年8月13日生まれ。医療法人社団仁友会 仁友クリニック院長。医学博士。専門は呼吸器内科。日本内科学会認定医、日本アレルギー学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。東京都立府中病院(現・東京都立多摩総合医療センター)呼吸器科勤務を経て現職。上気道と下気道の炎症に着目した独自の視点で喘息診療を行う。

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『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』

(杉原徳彦/あさ出版)

「長引く咳」「痰がからみやすい」、放置しがちな体のちょっとした異変は、「鼻の炎症」が原因かもしれません。そのままにしておくと、全身に危険が迫る可能性も!?日本全国から毎月2000人以上の患者を受け入れて治療にあたる、呼吸器の名医がまとめた初著書の中には、思い当ることが多すぎて、きっと鼻の治療をすぐに始めたくなります。

※この記事は『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』(杉原徳彦/あさ出版)からの抜粋です。

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