6月に入り、体も疲れてくる季節。そんな中、ぜひ取り入れてみたいのがお茶で五感を鍛える「お茶活」です。ただ飲むだけではない、お茶の新たな楽しみ方に満ちた最新のお茶活事情をご紹介します。
今回、最新のお茶活事情を取材しに出向いたのが、5月23日に東京・渋谷で開催された「伊藤園健康フォーラム ~お茶で人生100年時代を豊かに生きる知恵~」というユニークなイベント。特に興味深い「お茶活」を紹介していた「体験コーナー」から、3つの「お茶活」を紹介しましょう。
新たな時代「令和」にぴったりの(?)涼やかなディスプレー
■最新お茶活 (1)
涼やか!お茶の甘みもたっぷりな「氷水でいれる緑茶」
これからの季節にぜひ取り入れたいのが、氷水出し緑茶コーナーで実演されていた、氷と水出しの緑茶。この日は、鹿児島産の茶葉を使って、実際にお茶をいれてみました。まず、通常よりもたっぷりめ、ティースプーン3杯分の茶葉を急須に入れ、茶葉にかぶるように氷を2~3個入れます。そのうえに、水を注いで待つこと3分。器に注ぐと美しい薄緑色のお茶に。お茶の甘みと旨味がしっかり感じられる氷水出し緑茶ができました。
こちらのコーナーでは、お茶をいれた後に残った茶殻を活用したレシピの紹介もありました。茶殻にかつお節をかけ、ポン酢で和えたおひたしは、さっぱりとしながら、ほのかに茶葉の苦みを感じる大人の味。「ご自宅で作るときは、柔らかい茶葉の方が、サラダ感があっておいしく召し上がれます。新茶や一番茶を飲んだ後がおすすめです」と、伊藤園社員の方が教えてくれました。
お湯の温度とお茶の味わいの変化の説明も
氷と水で簡単においしい冷茶がいれられます
茶殻とかつお節をポン酢で和えたおひたし
■最新お茶活 (2)
昔ながらの製法「手揉み茶」を体験!
伝統の茶師体験コーナーでは「手揉みの茶葉づくり」を体験。普段私たちが飲んでいるお茶は、機械で製造されたものが一般的ですが、ここでは昔ながらの手揉み茶の作り方を披露。摘み立ての新芽を蒸した後、手で5~6時間ほどかけて揉み上げていくそうです。茶葉は、ホイロと呼ばれる台の上で、転がすようにしながら揉んでいきます。ホイロに手を触れると、じんわりと暖か。茶葉はしっとりと水分を含んでいることがわかります。温度や揉み方、力加減を調節しながら、針のような茶葉に仕上げていくのは、伊藤園社員の方の「熟練の技」です!
■最新お茶活 (3)
味わいと香りが変化!「焙煎ほうじ茶」で癒やされる
ほうじ茶のしあわせの香り体験コーナーでは、ほうじ茶の香りの変化を体験しました。お茶を炒ることを焙煎といい、焙煎の具合によって香りや味が変化します。
焙煎によるほうじ茶の味と香りの変化
・弱焙煎...甘い香ばしさと軽やかな味わい
・中焙煎...香ばしさと味のバランスがとれた飲みやすい味わい
・強焙煎...ほうじ茶らしい強い香ばしさとしっかりとした味わい
左から、緑茶、弱焙煎茶、強焙煎茶。色や香りの変化を楽しめます
ほうじ茶の香りを嗅ぐことは、ほっとする効果もあるそう
実際、焙煎の異なるほうじ茶を飲み比べてみると、その味わいや香りの違いに驚きます。また、緑茶を使ってほうじ茶をつくる方法も教えてもらいました。その方法は、フライパンで緑茶を炒るだけと簡単!油はひかず、茶葉の香ばしい香りを楽しみながら、じんわりと炒るだけで完成します。興味がある人は、自分で作って、味や香りの変化を体験するのも楽しいですね。
ポリフェノールやテアニン・・・お茶の豊富な健康成分
ほかにも2つの講演とパネルディスカッションが開催されました。
第1部の基調講演は、東京大学 名誉教授・大学院農学生命科学研究科 特任教授の阿部啓子さん。
超高齢化社会・日本における次世代機能性食品の研究成果を紹介してくださいました。
「抗酸化作用の高いポリフェノールは、機能性食品の中でも特にお茶に多く含まれていることが分かっています。ポリフェノールは、さまざまな病気の原因を取り除くのに有効ですが、残念ながら効果は長く持続しません。ですから、毎日、食事の度にお茶を摂ることが、健康維持に役立ちます」(阿部さん)。お茶を生活に取り入れることで、健康寿命を伸ばして、いくつになっても元気で暮らしましょう、と呼びかけました。
続いて、登壇したのが国立研究開発法人理化学研究所 生命機能科学研究センターの片岡洋祐さん。
緑茶による体と脳の健康効果を紹介。「お茶には抗酸化作用のエピガロカテキンや、心を落ち着かせるテアニンなど、健康にいい成分が多く含まれています。中でも、最近の研究で、高濃度のテアニンが脳の保護や認知機能の改善に役立つことが分かってきています」(片岡さん)
人生100年時代に役立つ、お茶の摂り方とは?
続いて行われた第2部のパネルディスカッション「人生100年時代を豊かに生きるには」では、平均寿命世界一の日本で、どのようにして長寿を獲得してきたのか、健康寿命を延ばすために何ができるのか、また、お茶に求められる役割について、専門の方々が一同に会して議論が行われました。
奈良女子大学 生活環境科学系 生活健康学領域 教授の鷹股 亮さんは、昨年報道された「熱中症の予防」に関するニュースを解説。「緑茶はカフェインが入っているため利尿作用から脱水症につながると報道されましたが、実はカフェインは大量に摂らないと利尿効果がありません。食事の時にお茶など飲みやすい飲料を摂る習慣をつけることで脱水症状を防ぐことができます。もちろん余分な水分は排出されますが、脱水時にはお茶の摂取は水分補給として有効です。特に食事の際には積極的に摂取するのが望ましいです」(鷹股さん)。
このほか、いつまでも健康で長寿を目指すためには「抗酸化力を持つポリフェノールなどを積極的に摂る」「抹茶を日常生活に取り入れることで、脳の老化予防や脳機能の維持が期待できる」「脱水時には、お茶の摂取は水分補給として有効。特に食事の際は積極的な摂取を」「お茶の時間で、人とのコミュニケーションを」など活発な意見交換が行われ、会場のみなさんも、あらためてお茶が持つ健康パワーのすごさを見直すきっかけとなりました。
新元号・令和となり、新たな時代を迎えるなか、健康維持に努めることは欠かせません。毎日の生活にお茶を楽しむ時間を設けて、心と体の健康に役立てましょう。
取材・文/笑(寳田真由美)