「人生の最期のときまで住み慣れた自宅で過ごしたい」と願う人は多いですが、それをかなえるためには「在宅医療」や「在宅介護」の連携や、自分が終末期にどのような治療を受けたいかという「意思表示」が重要です。長年「在宅医療」に携わってきた医療法人アスムス理事長の太田秀樹先生に、自分らしい最期を迎えるための準備についてお聞きしました。
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延命治療を望まない人が8割以上
2018年に亡くなった女優の樹木希林さん(享年75)は、闘病を続けながら「死ぬときぐらい好きにさせてよ」という広告に登場し、大きな反響を呼びました。下図「延命治療に対する65歳以上の人の考え方とは」を見ると、延命治療を望まない人が多数です。
「延命治療」に対する65歳以上の人の考え方
※全国65歳以上の男女を対象とした「万一、あなたの病気が治る見込みがなく、死期が近くなった場合、延命のための医療を受けることについてどう思いますか」という質問に対する回答
※出典:内閣府「高齢者に健康に関する意識調査」(2012年)を基に作成
「事前指示書」で延命治療についての希望を伝える
自分らしい最期を迎える準備として「事前指示書」の作成があります。将来、判断能力を失ったときなどに備えて、家族や医師にどのような治療をしてほしいか伝えるための文書です。
「『事前指示書』の作成時期は、要介護認定を受けたとき、医師に余命を告げられたときなどが一つの目安になります。最近は、体が元気なうちに家族や医師に『事前指示書』を託す人が増えています」と太田先生。
下の「事前指示書」は、太田先生が在宅医療で看取った患者さんが執筆したものです。
いざ、というときのために自分で用意する「事前指示書」の例
事前指示書
私の病気が不治の状態であり
死期が迫っていると診断された場合、
ただ死期を延ばすだけの
延命措置は一切お断りいたします。
2週間以上にわたり、
いわゆる植物状態になったときは
生命維持措置も一切取りやめてください。
重い病気で意思が示せなくなった場合、
人工呼吸器・胃ろう、気管切開、
その他のいろいろな延命措置を
一切お断りします。
食べられなくなったら水だけ、
それも飲めなくなったら
そのままにしてください。
点滴による栄養も止めてください。
苦しみだけを取り除く、
痛み止めだけにしてください。
最後は自宅で過ごしたいです。
葬儀や戒名などできるだけ簡素にして、
新聞に死亡記事も載せないでください。
みんな仲良くよい家族で、
幸せな一生でありました。
ありがとう。
平成三十年六月十一日
氏名○○○○○
このように、最期の迎え方をどうしたいか、自分の言葉で伝える方法もありますので、参考にしてみてください。
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取材・文/松澤ゆかり