「人生の最期のときまで住み慣れた自宅で過ごしたい」と願う人は多いですが、それをかなえるためには、自分が終末期にどのような治療を受けたいかという「意思表示」が重要です。長年「在宅医療」に携わってきた医療法人アスムス理事長の太田秀樹先生に、終末期の医療や介護の方針は、どのように決めるとよいのか、お聞きしました。
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終末期を自分らしく過ごすために
在宅医療では、「終末期にどんな医療や介護を受けたいか」「意思決定能力が低下したとき、誰に意思決定を頼むか」ということを家族や医師、ケアマネジャーなどと一緒に決めることが重要です。これをACP(アドバンス・ケア・プランニング)といいます。想定される病気には「がん」「認知症」「老衰」、脳梗塞や脳卒中などの「突然の病気」などがあります。
家族だけでは医学的知識が乏しいため、ACPを行うためには、信頼できて何でも話せる「かかりつけ医」を持つことが大切です。「健康で持病がない人は、かかりつけ医がいない、という人もいるかもしれません。ある年齢に達したら、いざというときのために信頼できるかかりつけ医を見つけておくと安心です」と太田先生。
最期のみとりを本人の意思通りに
終末期になると医療や介護について決断を迫られます。ACPで意思決定がすでに行われていれば、医師などの専門家が本人の意思に従って、治療方針を決められるのです。一方、本人の意思がうまく伝わっていない場合は、医師や家族などが話し合って、最善の治療法を決めることになります。しかし、それは本人が望む形ではないかもしれません。
「おひとりさま、夫婦2人暮らし、子どもと同居や近居など、高齢者をめぐる家族構成は多様化しています。『どう生きたいか』を信頼できる人に託しておくことが、よりよい終末期を迎えるための第一歩になります」
本人の意思が確認できているか、いないかなど、以下の図を参考にして、終末期医療の介護・ケアを検討してみてください。
終末期の医療・ケアの方針はどのように決める?
出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年)を基に作成。
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取材・文/松澤ゆかり