理想の在宅医療に欠かせない「地域包括ケアシステム」って?

「人生の最期のときまで住み慣れた自宅で過ごしたい」と願う人は多いですが、それをかなえるためには在宅医療や在宅介護の連携、自分が終末期にどのような治療を受けたいかという意思表示が重要です。在宅医療に長年携わってきた医療法人アスムス理事長の太田秀樹先生に「在宅医療」と「延命治療」の現在についてお聞きしました。今回は「理想の在宅医療」についてお届けします。

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在宅医療を支える地域のケア力

「在宅医療」とは、病気の人や体が弱っている人などが自宅で暮らせるように、医師や歯科医師、看護師や薬剤師などの専門職が訪問して療養生活を支える医療です。

「近年の風潮として、最期まで自宅で過ごしたいという患者さんの希望と、病状が安定したら退院させる病院側の方針が相まって、在宅医療で最期を迎える人が増えています。私の患者さんでは8割に達するほどです」と太田先生。

下図のように、在宅医療を受ける人の状態はさまざまに変化します。安定期から肺炎や骨折などで急に入院したり、通院や往診を経て入院に移行することもあります。一方、自宅で安定した生活を送っていても、いずれはみとり期を迎えるのです。

「在宅医療では訪問診療の医師だけでなく、ホームヘルパーや訪問看護師など、さまざまな職種の人が連携して患者を支える必要があります。「地域の実情に合った医療、介護、予防、住まい、生活支援が確保される仕組みを『地域包括ケアシステム』といいます」と太田先生。


『在宅医療・介護と地域包括ケアシステム』の取り組み

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今後の医療に求められる役割

これまでの医療は下にまとめたように「病院」が中心でした。これは治療で命を救う医療、できるだけ長生きすることを目指す医療だといえます。

●これまで行われてきた医療
・救命(急性期)医療が中心
・長寿を目指す
・病院で完結する医療
・専門医(疾病・臓器ごと)が求められる
・病気の原因を取り除く
・寿命を延ばすことに重点を置く

今後、求められる医療

・みとり(終末期)医療が中心
・天寿を全うすることを目指す
・地域で完結する医療
・かかりつけ医が求められる
・症状を楽にする(緩和ケア)
・QOL(生活の質)向上に重点を置く

「今後は地域に根ざした在宅医療が広まると考えられます。本人の意思を尊重し、緩和ケアやみとりに重点を置く医療です」と太田先生。

住み慣れた自宅で最期を迎えるためこれから必要とされるのは「地域に根ざした医療」になるかもしれません。

 

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取材・文/松澤ゆかり

 

 

<教えてくれた人>

太田秀樹(おおた・ひでき)さん

医療法人アスムス理事長。医学博士。日本大学医学部卒業後、自治医科大学大学院修了。同大学整形外科医局長などを経て現職。著書は『「終活」としての在宅医療』(かもがわ出版)など。

この記事は『毎日が発見』2019年5月号に掲載の情報です。

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