ひと昔前は、切り傷や擦り傷の手当てといえば、傷口を消毒してガーゼなどを当てて、乾かして治すのが主流でした。最新の治療法はどうなっているのでしょうか? 銀座スキンクリニックの坪内利江子先生に教えてもらいました。
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最近は、消毒をせず、乾燥させない「湿潤療法」という、これまでの常識を覆す手当てが注目を集めています。
人間が本来持っている「自己治癒力」を最大限に生かす治療法で、かさぶたを作るよりも早く、きれいに治すことができます。
ケガをすると、出血した傷口に血小板が集まり、血液を固め、滲出液(しんしゅつえき)と呼ばれる体液が染み出てきます。
この滲出液には傷を治すために必要な成分が豊富に含まれていて、これが傷口に作用して、傷を治します。滲出液が活躍するためには、傷口を乾燥させず、適切な湿潤状態を保つことが重要です。
消毒液は傷を治そうとする細胞にもダメージを与えてしまい、逆に傷の治りを妨げてしまいます。
水道水で傷口に入り込んだ砂や泥を洗い流せば十分です。
ガーゼで覆うと、滲出液がガーゼに吸い取られて傷口が乾燥し、かさぶたとなってしまいます。かさぶたは皮膚の再生を邪魔し、傷の治りを遅くさせます。
また、ガーゼを取り換えるときにくっついて、せっかくできた皮膚をはがしてしまうこともあります。
ドラッグストアなどで販売している湿潤療法用の絆創膏(ばんそうこう)などを利用するといいでしょう。
滲出液が染み出て、膨らんできたら交換します。3日に1回程度が目安です。
刺し傷やかみ傷、皮膚が裂けた場合などは、患部の奧深くまでばい菌が入り込んでいることがあるので、病院を受診した方がよいでしょう。出血が止まらない、腫れてくる、発熱を伴うなどの場合も同様です。
●湿潤療法
(1)患部を水道水や石鹸水できれいに洗う(消毒液は使わない!)。
(2)湿気を保つ絆創膏などで患部を保護する(傷口を乾かさない!)。
(3)滲出液が染み出て、膨らんできたら、交換する。
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取材・文/古谷玲子(デコ) イラスト/中川 透