体によいとすすめられて、昔からやっていることが実は逆効果だったとしたら...? そんな「間違えがち」な医療の常識・非常識を専門医の皆さんに聞いてきました。今回は季節の変わり目にぜひ正しく実践したい「手洗い」。東京医科歯科大学医学部附属病院で、感染制御部長を務める貫井陽子先生に、効果的な方法を教えてもらいました。
手すり、つり革、ドアノブ、リモコン、衣服、髪の毛、顔などに触れたり、トイレを使ったりしているうちに、手にはさまざまな菌やウイルスなどの病原体が付着します。でもインフルエンザ流行のシーズンが過ぎると、そのことは忘れてしまいがち。
手を洗うことはとても有効な感染対策になりますが、間違った方法で手洗いすると、細菌をまき散らしてしまう結果を招くことになります。
例えば、30秒以上流水とせっけんで手洗いをした場合は、細菌数は100万分の1に減りますが、手を拭かずにぬれたままの状態でいると、乾燥した状態の100~1000倍の細菌を伝播(でんぱ)する可能性があります。
手洗い後は清潔なハンカチやペーパータオルでしっかりと手の水気を拭き取りましょう。
手洗いが難しいときは、携帯型の手指消毒薬を使うことも効果的です。
最近はハンドドライヤーが設置されているトイレがたくさんありますが、しっかりと手洗いしない手をハンドドライヤーで乾かすと、手に残っている病原体が飛び散り、ハンドドライヤーの周りが汚染されてしまいます。手をしっかり洗ってから利用するように心がけましょう。
汚れた手で目、鼻、口に触れると感染を起こしやすくなりますから、触れないようにしましょう。指を鼻の穴に入れるのは、手に付いた病原体を鼻の粘膜に付着させて感染を起こすようなものなので、やめましょう。
ティッシュで鼻をかむときも、鼻汁をかみ残さないように、ゆっくり最後まで鼻汁を出し切りましょう。鼻汁が出ているのをすすったり、いつまでも鼻をかまずにいると、鼻汁に病原体が付着してそれを鼻の奥に吸い上げてしまう可能性もあるので、鼻汁が出たら、鼻をかむようにしましょう。
口を開けて呼吸すると口から病原体を取り込みやすいので、なるべく鼻呼吸をして、空気清浄機のような役割を担っている鼻のフィルターを通して空気を取り込むようにしてください。
次の記事「医師に聞いた「擦り傷には消毒液を塗った方がよい」ってホント?/医療の常識・非常識(2)」はこちら。
取材・文/宇山恵子 イラスト/中川原透