「排尿しようとすると下腹部が痛む」「トイレに行く回数が増えた」「残尿感がある」などの症状に悩まされたことのある人は少なくないのではないでしょうか? もしかしたらそれらの症状は「膀胱炎」のせいかもしれません。膀胱炎はその名のとおり、尿をためる膀胱で炎症が起きる病気です。診断もしやすく治療しやすい病気ですが、一方で人によっては繰り返すことも多い病気。そこで、膀胱炎になる原因や理由、予防法を、医療法人 東和会第一東和会病院 女性泌尿器科・ウロギネコロジーセンター長の竹山政美先生に教えていただきました。
前の記事「「膀胱炎かも...何科に行けば?」医師が教える受診の心得/膀胱炎(4)」はこちら。
膀胱炎は薬物治療が基本。自己判断での薬の中止は厳禁
膀胱炎になってしまったら、病院で治療を受ける必要があります。頻尿や排尿痛、残尿感、尿の濁りなど、思い当たる症状がある場合は、早めに泌尿器科や内科、婦人科などを受診しましょう。
「膀胱炎の疑いがある場合は、尿検査を行います。尿検査で、一定数以上の白血球や細菌が見つかれば膀胱炎と診断できます。さらに尿の中の細菌を培養する尿培養検査を行い、菌の種類を調べます。治療には、抗菌薬を用いるのが一般的です。通常、3~7日の服用で膀胱の中は無菌となり、粘膜の炎症も修復されて治ります。尿量が少なく、膀胱に尿がたまっている時間が長いと膀胱内で菌が増殖しやすくなるので、水分を多めにとって尿量を増やすようにしてください。2~3日して症状がよくなったら、水分の摂取量は普段通りに戻します」(竹山先生)
薬物治療には、「ニューキノロン系」や「セフェム系」といわれる抗生剤を服用します。
●ニューキノロン系(抗生物質)
1日1回、3~5日間服用。
代表的な薬...タリビッド、クラビット
●セフェム系(抗生物質)
1日3回、5~7日間服用。
代表的な薬...フロモックス、ケフラール
症状がよくならない場合は、尿培養検査の結果を確認して治療法が適切かどうかを判断したうえで、薬の種類を変えて様子をみます。症状がよくなってきたからと自己判断で薬の服用を中止せず、処方された分はすべて飲みきるようにしましょう。
漢方薬で膀胱炎を治したいという方もいることでしょう。
「漢方薬自体に菌を殺す作用はありません。ですが、症状がきついときに、例えば、抗生物質と一緒に漢方薬の猪苓湯(ちょれいとう、※)を飲むと利尿作用が促され、余分な水分を排出するのに役立ちます。ただし、膀胱炎は、原因となる細菌をなくさない限り治癒はしませんので、必ず医師や薬剤師に相談してよりよいケアをしてください」(竹山先生)
※猪苓湯は、尿路の熱や腫れをひき、利尿作用を促す漢方薬です。具体的には、頻尿、残尿感、血尿などの排尿異常に用いられます。
「病院に行く時間がない」「受診するのが恥ずかしい」などの理由から、市販薬で膀胱炎を治したいという人も少なくないかもしれません。
ですが、薬の成分には、医療用医薬品のみで使用されるものも多く、市販薬に同等の効果を期待することは難しいことがあります。市販薬を服用しても症状の改善が見られない場合や、頻繁に繰り返す場合は必ず、医師の診察を受けましょう。
ところで、膀胱炎の中には、細菌が原因ではない「間質性(かんしつせい)膀胱炎(※)」という病気もあります。
この場合は、抗生物質を飲んでも効果は期待できません。間質性膀胱炎は、誰にでも効果がある治療法が確立されているとはいえない病気です。個々の症状や病気の進行具合に合わせて、ベストな治療法を探っていく必要があります。
※間質性膀胱炎とは、何らかの体のメカニズムの崩れによって、炎症が、膀胱の粘膜の奥の間質と呼ばれる層にまで達してしまうことで起こる病気。主な症状は、頻尿や膀胱痛ですが、改善と悪化を繰り返しながら、長い年月をかけて進行し、膀胱そのものが萎縮していきます。
次の記事「繰り返す膀胱炎は隠れた病気のサインかも/膀胱炎(6)」はこちら。
取材・文/笑(寳田真由美)