もうすぐ節分。豆まきは奈良時代に中国から伝わった風習だといわれていますが、「福豆」として欠かせないのが大豆です。大豆の栄養素としてはイソフラボンがよく知られていますが、実はほかにもさまざまな栄養が凝縮しています。長年、大豆について研究し、"大豆先生"とも呼ばれる跡見学園女子大学の石渡尚子先生に、その栄養素や上手な食べ方についてお聞きしました。
大豆は血糖値の急上昇などを抑えてくれます
「大豆は、三大栄養素の炭水化物、たんぱく質、脂肪の他、イソフラボンなど20種以上の機能性成分を含む栄養満点の食材。多くの食品を食べるのと同じような栄養素が一粒に含まれています」と、跡見学園女子大学教授の石渡尚子先生。
その効能を十分に得るには、できるだけ丸ごとの状態で摂ること。石渡先生のレシピはとても簡単です。「豆を5倍の水に一晩漬け、そのまま40~50分ほど好みの柔らかさになるまで煮ると、水煮ができます。この水煮をスープやサラダなどに入れるだけ!」。水煮は冷蔵で3~4日保存可能。自分で煮ると、そのおいしさに驚く人も多いとか。
食べ方を少し変えるだけで、さらに効果も上がります。例えば、大豆を最初に食べる「大豆ファースト」。一日の最初の食事(朝食)に摂ると血糖値の上昇が緩やかになる他、毎食の最初に摂れば、大豆に含まれる脂質とたんぱく質が満足感をもたらし、食べ過ぎを防ぎます。
大豆製品は、煮豆や納豆、きなこ、豆乳、油揚げなど種類豊富で食べ飽きないことも魅力。さまざまな製品を摂って、大豆の力を取り入れましょう。
小さな1 粒にさまざまな栄養素が凝縮!
[イソフラボン]
女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをし、生活習慣病や骨粗鬆症の予防に期待。
[たんぱく質]
9種の必須アミノ酸を含む良質の植物性たんぱく質。心臓病のリスクを減らす効果があるとも。
[カルシウム]
木綿豆腐1/2丁は牛乳コップ1/2杯分のカルシウム量に相当。ビタミンDと一緒に摂るとよい。
[食物繊維]
排便を促す不溶性と、コレステロールや血糖脂質を下げる水溶性の2種の食物繊維が豊富。
[マグネシウム]
骨や歯を構成する栄養素。糖尿病や動脈硬化など生活習慣病の予防に役立つといわれる。
[ビタミンB群]
糖質をエネルギーに変えるビタミンB1、納豆には脂質の代謝などを促すビタミンB2が豊富。
[レシチン]
細胞の生体膜の主要な構成成分として知られている。脳に最も多く存在している。
[α-リノレン酸]
人間に必要な必須脂肪酸。血中の中性脂肪や悪玉コレステロール値を抑える働きを持つ。
石渡先生流! 大豆摂取の4つの基本
●その1 朝食の「大豆ファースト」で血糖値の急上昇を防止
朝食に大豆を摂ると、大豆に含まれる食物繊維やオリゴ糖が血糖値を緩やかに上げるだけでなく、2食目以降の食後の血糖値上昇も抑えます。血糖値の急激な上昇や下降は、疲労、食後の急激な眠気、生活習慣病にも影響大。丸ごとの大豆製品を一日の最初に食べることを心掛けましょう。
●その2 「1日2食の大豆食」でイソフラボンの効果をキープ
大豆のイソフラボンは摂ってから6~8時間で半分が体外へ排出されます。朝食に多くの大豆製品を食べても、午後には少なくなります。「一度に多く」ではなく、2回に分けて摂ることで、一日中ほぼ一定量のイソフラボンが血中に存在することになり、その効果をさらに得ることができます。
●その3 「食べ過ぎ」に注意! 1 日の目安は大豆製品3 品
イソフラボンの過剰摂取はホルモンバランスの乱れを招く可能性があります。食品安全委員会は1日約75㎎まで、石渡先生は少なくとも1日約50㎎の摂取をすすめています。
[イソフラボン含有量の主な目安]
納豆(1パック/40g)...29.4㎎
煮豆(25g)...18.1㎎
みそ(大さじ1)...8.9㎎
豆腐(1/4丁)...20.3㎎
豆乳(200ml)...52.1㎎
※厚生科学研究(生活安全総合研究事業)食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)より
●その4 「丸ごと食べる」を習慣にして食物繊維やビタミンを摂取
豆腐や豆乳など大豆を加工した食品はイソフラボンは豊富に含んでいますが、食物繊維やビタミンなどの栄養素は損なわれています。納豆、煮豆(左下写真)、きなこ(右下写真)など、丸ごとに近い状態の大豆製品を積極的に摂るとよいでしょう。
取材・文/岡田知子(BLOOM)
参考文献/白井明大『暮らしのならわし十二か月』(飛鳥新社)